「あのころの僕は変でした。競合店に品揃えがパクられたと苛立ったり、日々の売上に一喜一憂したり。いつも売上と競合店ばかり気にしていました。木ばかりを見て、森を見られなくなっていたんです」
こう語るのは、「日本のカッコイイを集めたお土産屋さん」をコンセプトに2010年創業、大量生産・大量消費の濁流とは距離を置いた日本産の良いものを発掘し、独自の仕入れ哲学で編集するセレクトショップ「カタカナ」の店主、河野純一さん。
文具、書籍、玩具、食器、衣料品、服飾雑貨、食品など品揃えは一見すると多種多様ですが、じつは一本の太い筋が通っています。すべてがメイドインジャパンであり、河野さんが惚れ抜いて仕入れた品々です。雑貨の聖地」と呼ばれる東京・自由が丘においても、ひときわ輝く人気の店として、多くのお客様に愛されています。
その品揃えの哲学については新著『売れる人がやっているたった四つの繁盛の法則』に譲りますが、そんな河野さんがなぜ“森”を見られなくなったのでしょうか。それは渋谷駅前に開業した商業施設に出店し、売上も順調に伸びていたときのこと。自分ばかりか、従業員たちの顔から笑顔が消えていることに気づいたのです。
自分が何のために商売を始めたのか? それは関わる人たちを笑顔にするためだったと思いなおし、商業施設から撤退。「もう一度、この小さな店を輝かせることに集中したい」と、「素直な心で笑顔を追い求め続ける」という理念を立てました。
今、売場には笑顔が戻っています。カタカナらしさを共有する従業員の笑顔、いつも驚きと愛着を感じさせてくれる品揃えに「この店は私のお店」と感じてくださるお客様の笑顔、そして河野さん自身の笑顔です。物を通じて人を笑顔にするという思いを胸に、河野さんの日本全国を回る「さがしモノの旅」はこれからも続いてくでしょう。