笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

苦役? 作品? 活動?

すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

 

これは日本国憲法第27条第1項の条文。基本的人権の一つ「勤労権」を定義した条文であり、国民が自由な労働の機会を得ようとすることに対して国が必要な措置をとるべきである、とする政治上の責務を宣言したものとされています。

 

「勤労権は本来“work”を意味するものであって、けっして“labor”やないんよ」

 

昨日、ある会合の後の懇親会で敬愛する先輩がおっしゃったひと言。人事労務管理の専門家、社会保険労務士である彼の言葉だけに、耳に残ります。彼いわく「日本国憲法の英文草案では“work”とあるのに、労働基準法では“labor”とされてしまった。日本人の労働観はここからおかしくなってしまった」。

 

たしかに労働基準法の英訳は「Labor Standards Act」。laborとwork、この違いが気になり、調べてみると、アメリカ合衆国国籍のドイツ系ユダヤ人であり政治哲学者、ハンナ・アレントの著作『人間の条件』にたどりつきました。

 

アレントは同著で、人間の生活を「観照的生活」と「活動的生活」の二つに分類。観照的生活とは永遠の真理を探究する哲学者の生活であり、活動的生活とはあらゆる人間の活動を併せたものとし、活動的生活は次の3つに分けられるとしています。語源と併せて考えてみました。

 

Labor
生存のためにする「労働」であり、語源はラテン語の「laborare」。骨折る、骨折って進むというニュアンスがあり、奴隷制を連想させる苦役のことを指します。「slave(奴隷)」という派生語もあります。

 

Work
何かを創り出す「仕事」であり、語源は古英語の「wyrcan」。ある目的を持って努力して行う仕事、努力、研究を指します。何かを生み出すことであり、「作品」とも訳されます。

 

Action
他者のために社会に働きかける「活動」であり、語源はラテン語の「actionem」。動かすこと、公の行為という意味から起こり、積極的な努力、注目に値するか重要な活動というニュアンスを持つようになります。

 

さて、あなたの勤労(活動的生活)は3つのうち、いったいどれでしょうか。苦役か? 作品か? 活動か? 一日の多くを占める時間をどう使うかで、人生は変わります。そんなことを教えてくれた先輩のひと言でした。

 

雑な心でやった仕事は
すべてが雑用となり
心を込めてやった雑用は
立派な仕事になる

 

出点:プレジデント社『店は客のためにあり店員とともに栄え店主とともに滅びる』

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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