商いの業は美しいものである――こう高らかに謳った人は、いままでいませんでした。ところが、岡田徹という一人の経営指導家が、商売は人間の存立にとって欠かせない役割を持つ天職であることに誇りを持てと謳いました。
いまからおよそ70年前、商業界創立者、倉本長治の盟友、岡田徹はこの世を後にしました。
いま私たちの許に残されているのは一冊の本『岡田徹詩集』です。何かを考えごとをするとき、何か思いを固めるとき、私がときおり読み返す書物の一つです。
今日もそんなときがありました。皆さんにもそれをシェアしましょう。「実印を捺す」という詩です。
商売の道は人間の誠実を尽くす道でありたい。
店のつくりで
蛍光灯で
アーケードで
お客を引きつけようとする前に、
私の店は正直な店ですと
ただ、この一言を
天地に恥じず言い切れる商売をしようよ。
商品の豊富さを誇る前に
値段の安さで呼びかける前に
一つ一つの商品に
あなたの実印を捺して差し上げたい。
古い詩集ですが、いまも多くの商業者の心を打ちます。実印を捺すつもりで品を選び、値段をつけ、お客さまにお奨めする。そこには、人間としての誠実さが求められるのです。