スーパーやコンビニ、ドラッグストアで、陳列棚を広く占める商品の一つに即席麺があります。この商品群、社会・経済情勢を如実に表わすものでもあるのです。
日本経済新聞の4月30日配信記事「値札の経済学」によると、即席麺の中でも「袋麺」の販売が堅調といいます。物価高で多くの食品や外食の値上げが進む中、一食あたりの安さが人気の要因とのこと。また、防災意識の高まりも追い風で、過去5年間の販売金額の伸び率は「カップ麺」を上回るといいます。
たしかに食品値上げが進んでいます。企業信用調査会社、帝国データバンクの調査によると、直近4月に値上げされた飲食料品はおよそ2800品目、値上げ率は平均でおよそ23%だということです。2023年にさかのぼれば、累計で3万2396品目、値上げ率は15%となっています。
もちろん、即席麺も値上がりしています。それゆえ前述の記事のとおり、カップ麺よりも1食あたりのコストパフォーマンスの高い即席袋麵が伸びているというわけです。庶民の生活防衛意識の反映が見られます。
即席袋麺といえば5食パックが標準でしたが、ここにも変化が見られます。平均世帯人数の減少です。厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所がまとめた「日本の世帯数の将来推計」によると、平均世帯人数は2020年の2.21人から減り続け、2033年には初めて2人を割り込み、1.99人にまで減ることが予測されています。
世界初即席麺といえば、1958年発売の日清食品「チキンラーメン」。当時、日本の平均世帯人数は約5人でしたから、家族全員で食べられるよう5食パックは当然のことといえるでしょう。それが今日、平均世帯人数は約2人、単独世帯は一般世帯の38.1%を占めて最多の家族形態となっています。
そこで最近の広告市場をにぎわすのが「日清ラ王 袋麺」の3食パックのコマーシャルです。このブログを書こうと思ったのも、それを観たことがきっかけでした。同社ホームページには、5食パックから3食パックへの変更の理由をこう記しています。
「袋めん5食パックは多すぎる」といったお客さまの不満を受け、ラ王は5食から3食パックになって買いやすくなりました! もちろん、変化はパック数だけではありません。厳選素材を使用したこだわりスープと、よりコシが強くなった麺でさらに美味しく! 「どーせ買うなら3食パックのラ王!」ぜひお試しください!
こうした容量変更が飲食料品で行われる場合、その多くは実質的値上げを意味しています。しかし、日清ラ王の場合は一食当たりの価格は変更していませんから、それにはあたりません。
商品単価が下がることで消費者は買いやすくなり、メーカー側は空いたスペースに「醤油」「味噌」「柚子しお」「ちゃんぽん」「豚骨醤油」「担々麺」という全バリエーションを置いてもらえる可能性が高まり、小売店の買上点数が上がれば“三方よし”となる――これが今回のリニューアルの狙いのようです。
3食パック化は吉と出るか、凶と出るか。結果は様子をしばらく見なければなりませんが、こうした変化を他人事と見てはなりません。あなたの扱う商品にも、こうした変化対応が必要なものがないかと、自分事とすべきなのです。