米経済誌「フォーチュン」の名物企画と言えば「最も働きがいのある会社」。2023年9月に発表された直近のランキングで、並みいる大手企業に伍して4位にランクインするのが、地域密着スーパーマーケット「ウェグマンズ(Wegmans)」です。
創業は1916年にニューヨーク州北部の街ロチェスターに、小さな食料品店として創業。家族経営を貫き、地域住民においしくて健康的な食材と食事を提供することをミッションに、ニューヨーク州を中心に東海岸エリアだけで展開し、現在110店舗超、従業員5万3000人を数えます。
Never think about yourself, always help others.
これは、そのすべての店舗の店先に掲げられている前会長のロバート・ウェグマンズの言葉。「自分のことを考えず、常に他者のことを気にかけよ」というメッセージですが、忘己利他、伝教大師最澄の「己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」という言葉を思い出させます。
そういえば、こんな詩もあります。宮沢賢治の遺した詩です。
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ陰ノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ
ここで大切なのが、賢治も書く「ヨクミキキシワカリ」という姿勢と実践。お客様の視点に立ち、お客様のことをお客様以上に考え、その解決に努めるとき、利他は自利に通じることを「人気全米一」と言われる小さなスーパーマーケットが教えてくれます。