愛される商人とは
頼れる隣人であり
賢い生活者であり
誠実な人間である
追悼集「慈愛真実」は、「仏」と言われた商人、ニチイ創業者の西端行雄さんのもの。1982年、66歳で他界した西端さんは戦争で負傷後、小学校教員となりました。生徒たちと共に赴いた疎開先で、のちに妻となる春枝さんと出逢うことになります。
戦後、生きていくために春枝さんと共に行商から商いを始めました。商業界創立者の倉本長治と運命的な出会いを果たしたのが1954年のこと。1963年にはニチイを設立、個を生かし全体を生かすチェーンへと成長していきました。
追悼集の冒頭に、こう記されています。「愛と真実の灯で周囲を照らしていれば、周囲もまた、愛と真実の灯をもって照らしてくれる。それは、商人として、また人間として、何にもかえがたい幸せである。商人の心とは、人の心の美しさにその根源がある。そして人の心の美しさとは、愛と真実の灯を高く掲げお客さまの幸せを願い、その生活をお守りすることである」。
「われ必ずしも聖にあらず、かれ必ずしも愚あらず、ともにこれ凡夫のみ」とは、西端さんが生前よく口にされた仏教の教えです。自らを決して過信せず、むしろ己に対して厳しすぎるほど厳しい人でした。
人間としての弱さを悟ることで、そこに本当の強さが生まれます。愛される商人とは、頼れる隣人であり、賢い生活者であり、誠実な人間にほかなりません。西端さんが生涯をかけて追求した「慈愛真実」とはそういう意味なのです。