笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

粗末な段ボールに、丁寧で、少しかわいらしい字で綴られた一片の詩。おそらく、誰かに頼まれて即興で書かれたのでしょう。

 

書き手は商業界草創期の指導者、岡田徹。「お菓子屋さんの仕事」という詩で、後に『岡田徹詩集』に収められています。

 

お菓子はお母さんの味
夕げのあとのだんらんの一刻
丸々と肥えた子らの顔を見つめて
生きることの喜びを想う人たちに
「頑張りましょう」と
力一杯、手を握ってあげようよ!

 

お菓子屋さんの仕事は
二十円のキャラメル一つに
お母さんの心を添えてあげること
一日の仕事の疲れも忘れて
子らのために生きようとしている
私たちと同じ仲間の人たちに
モット光りを
モット喜びを
与えてあげようよ!
あなたのお店で
フト、亡くなった母親を想う
そういうお店になろうよ!

 

お菓子は故郷の味
住みづらい今日の生活に
家族五人、やっと通れる狭い道を
自分の腕一つで切り開こうと闘う人たちに
「頑張りましょう」と
力一杯、手を握ってあげようよ!

 

お菓子屋さんの仕事は
一袋三十円のはかり菓子に
遠く去った故郷の心を添えてあげること
…………

 

この黄ばんだ段ボールは額装され、商業界の応接室に置かれていました。それを見るたび、商い人の役割を思ったものです。菓子というモノに、お母さんの心、故郷の心を添え、光を、喜びを与えること。それを岡田は呼びかけました。

 

商いの本質は、いまも変わりません。業種や業態も超えた普遍的な価値があります。それはお客という大切な友人にまごころを尽すこと。それ以外に商いの目的はありません。

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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