「1%の法則」をご存知でしょうか。
昨日より1%努力を積み上げる(101%)か、昨日より1%努力を怠る(99%)かで、1年後にはおよそ38倍の差が生じるという、継続的な努力の大切さを表わすたとえです。101%(1.01)と99%(0.99)をそれぞれ365乗したとき、たった2%の差が圧倒的な違いになります。
1%を時間で表わすと、24時間は1440分ですから14.4分。わずか15分、されど15分。それを活かす人と活かせない人の差も大きいというわけです。
人材育成・採用の専門家、岡本文宏さんの新著『仕事のできる人を「辞めさせない」15分マネジメント術』のキーワードも「15分」。プレイングマネージャーとして孤軍奮闘している上司、経営者にとって、最大の悩みは部下、従業員のマネジメント。この巧拙が大きく業績を分けることを痛いほど知っています。
とくに「若手人材の離職」は世代間のギャップも手伝い、最大の課題となっています。しかも、見どころのある優秀な人材ほど、なぜか離職していくという痛い経験をしている上司、経営者は多いことでしょう。
しかし、自らも現業を持つ身ゆえ、大切なことなのに時間をかけられないというジレンマもあります。そんな上司、経営者にとって「15分で完結できるマネジメント法」を教えてくれるのが本書です。そのポイントは、マネジメントする側の意識と行動を変えることにあると、著者はわかりやすく説いています。
どんなに立派な待遇よりも
その店員を人として
心から尊敬するほうが
店員はその能力を発揮する
これは「日本商業の父」と言われる商業経営指導者、倉本長治の言葉です。拙著『店は客のためにあり店員とともに栄え店主とともに滅びる』でも紹介していますが、従業員とともに栄えてこそ、事業は永続性を持ちます。
従業員を「人として心から尊敬する」とは、その人の話を真剣に聞くことにほかなりません。新著で著者は「あなたは、スタッフの話をたとえ5分間でもじっくりと聞いたことがありますか?」(本書14ページ)と問い、多くは自分が一方的に話していると指摘しています。
そんな心当たりがある人にこそお奨めしたい一冊。著者にとって10冊目となる記念すべき一冊を読み、10冊のうち3冊に関わらせていただいた私が自信を持ってお奨めします。