笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

一つは、〇〇〇〇以外の品揃え。

二つは、価格競争。

三つは、売上目標やノルマ。

 

「店を経営していると、“やりたいこと”はいくらでもあります。しかし、時間も資源も有限だし、従業員たちにもこの仕事に“やりがい”を感じてほしい。これまでを振り返ると、これら三つの“やらないこと”の決断が経営に大きな効果をもたらしたと感じています」

 

浅草かっぱ橋商店街リアル店舗の奇蹟

 

こう語るのは、日本最大級の道具街、東京・浅草かっぱ橋の料理道具専門店「飯田屋」の飯田結太さん。飯田さんは大正元年創業の老舗を担う若き六代目。冒頭の〇〇〇〇には「料理道具」と入ります。

 

 

33坪の小さな店になんと8500アイテム以上の料理道具が揃う飯田屋は、品揃えの深さはもちろん、専門知識と人間味豊かな店員がとことんサポートしてくれる人気の店。しかし、かつては安売りに明け暮れ、「この店には未来がない」と従業員が次々と辞めていく「ヤバい店でした」と飯田さんは振り返ります。

 

「商人失格」「経営者落第」「勘違い後継者」と言われた彼がなぜ変われたのでしょうか? それこそが、彼の著作『浅草かっぱ橋商店街リアル店舗の奇蹟』編集に取り組んだ際のメインテーマでした。飯田さんはこう記しています。

 

〈時代が変わり、今までの常識はどんどん変わっていきました。これからますます、今までの常識は通用しなくなるでしょう。常識は時代によっていとも簡単に変わるのです。

 

でも、変わらない常識があります。それは「大切なことを大切にする」というものです。拍子抜けするほどシンプルで、「そんなの聞いたことないよ」と言われそうです。

 

その人は正しい。だって、これは創業から百年以上続く“飯田屋の常識”だからです。このシンプルな常識を大切して、飯田屋は小さいながらも愛され続けてきました。

 

じつは、これは僕が長年大切にできなかった常識でもあるのです。そのため一時期は、一緒に働く仲間も、お客様も、家族も僕から離れていってしまいました。

 

その後、僕の人生を変えてくれた“神様”と出会い、その大切さに気づきました。藁にもすがる思いで、仕事に、いえ、生き方そのものに取り入れてみました。すると、僕の人生のすべてが驚くほど好転していったのです。〉

 

 

店は客のためにあり店員とともに栄える

 

「商人失格の僕が変われたシンプルな常識」

「しくじり後継者のヤバい経営論」

「繁盛は目の前に 成功は心の中に」

「経営者落第の僕を救った三人の神様」

「大切なことを大切にすると大切にされる」

「超料理道具専門店の笑顔第一主義」

「過剰経営で一点突破」

「売るな! そうすれば売れる!」

「no life, no cookware」

「非常識を常識に変えた僕の繁盛物語」

「コンサルが教えてくれない潰れない店の作りかた」

「百年企業の売上目標ゼロ経営」

「キレイごとで飯を食べる」

「笑顔が先 利益は後」

「売上を捨てたら売上に愛された僕の話」

「マツコも知らない飯田屋の世界」

 

とまあ、本のタイトルをあれやこれやと考えました。最終的に、版元・プレジデント社の書籍編集部長兼販売部長の桂木栄一さんが決めたのが『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』です。

 

なるほど、駅から遠い「商店街」にあって、小さくて狭い「実店舗」で、時代にとりのこされた「業種店(金物屋)」という三重苦の“オワコン”でありながら、過去最高益を更新しつづける「奇蹟」を表わした良いタイトルです。

 

飯田屋は一般的には、キッチン用品の「小売・卸売業」に分類されますが、飯田さんは自身の商いを「喜ばせ業」と表現します。なぜなら彼は店は「客のためにある」ことを理解しており、それを素直に実践しているからです。

 

そんな彼だから、店は「店員とともに栄える」ものであり、店は「店主とともに滅びる」危険性をつねに持っていることを理解しています。拙著『店は客のためにあり店員とともに栄え店主とともに滅びる』と飯田さんの本の編集者がともに桂木栄一さんであることは偶然ではありません。

 

 

飯田さんは、私が知るかぎり、もっとも進化と成長を続ける商人の一人です。季節は「読書の秋」。ぜひ両書に、その真髄を探ってみてください。

 

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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