笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

コロナ禍が残した傷が癒えず、さらに先の見えない物価高に、全国の多くの商店街が苦しんでいます。商店主の高齢化が進み、これを機に事業を畳む店も少なくありません。

 

商店街から一つひとつと店が消えていく中、私たちは何を最優先すべきか。「千葉県商店街実態調査報告書」(令和5年3月)を読みながら、「神よ」で始まるある一文を思い出しました。アメリカの神学者、ラインホールド・ニーバーによるもので、彼の名をとって「ニーバーの祈り」と呼ばれます。

 

神よ
変えることのできるものについて、それを変えるだけの“勇気”をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの“冷静さ”を与えたまえ。
そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する“知恵”を与えたまえ。

 

報告書では「商店街衰退している要因」として17項目の選択肢を立てています。上位5位には「後継者不足」(57.7%)、「魅力ある店舗の減少」(55.9%)、「業種・業態の不足」(45.5%)、「買い物弱者の増加」(41.0%)、「近郊の大型店の進出」(37.8%)と続きます。

 

 

このとき、「ニーバーの祈り」を振り返ってみてください。17項目のうち、「変えることのできること」はどれで、「変えることのできないこと」は何でしょうか。事業者、行政、支援機関、それぞれの立場で「変えることのできるものと、変えることのできないもの」は違って当然です。現状を変えようとするとき、これらを識別する知恵をはたらかせることがまずは出発点です。

 

そして、「変えることのできること」に持てる資源を一点集中すると、やがて「変えることのできないこと」のうちにも、「変えることのできること」が見つかるようになります。逆もしかりで、持てる資源をいたずらに「変えることのできないこと」に振り向けていると、「変えることのできること」が「変えることのできないこと」へとなってしまいます。

 

では、事業者にとって「変えることのできること」として一点集中すべきは何でしょうか。私は「それぞれの店の魅力度向上」に尽きると考えています。報告書から選ぶなら「魅力ある店舗の減少」が該当するでしょうが、どこか他人ごとのような印象を持つ選択肢の表現になっています。

 

「魅力のない店舗とは自店のことだ」と“冷静”に認識し、自らを“勇気”をもって変えていきましょう。そこから始めなければ、未来はありません。個店一つひとつの魅力度向上こそ商店街活性化の一丁目一番地です。

 

アメリカ合衆国第35代大統領、ジョン・F・ケネディは就任演説で「わがアメリカ国民諸君、国家が諸君のために何を成し得るかを問わず、諸君が国家のために何を成し得るかを問いたまえ」と呼びかけました。国家を「商店街」、諸君を「店」と読み替えてみましょう。

 

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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