笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

目覚めたとき、「仕事がつらい」「今日は働きたくない」と思う朝を迎えた経験はありませんか? どうして、健やかな希望の朝を迎えられないのでしょうか?

 

一生懸命に頑張っているのに、成果として表れないからかもしれません。思ったように売上が上がらないから、利益が残らないからかもしれません。赤字や予算未達なら、なおさらです。

 

本来、売上とはあなたの誠実さを証明し、利益とは知恵の深さを測るものです。かといって、「私には誠実さも知恵も足りないのだろうか……」と思い悩む必要はありません。あなたが十分に誠実で知恵深いことは、これをお読みになっている時点ですでに証明されています。

 

ただ、誠実さと知恵深さを発揮する角度が違うのかもしれません。

 

小学生のころ、教室で手にした分度器を思い出してください。角度を測るための目盛りが刻まれた半円形をした道具です。

 

図画工作や算数で線を引くとき、1度くらいのずれはあまり気にないものでした。ところが1度違うと、1メートル先では1.74センチのずれが生まれ、1キロメートル先では17.4メートルの違いになります。あなたが月から地球に帰還する宇宙船に乗っていたとしたら、地球に着くころには地球およそ5個分もずれた虚空を飛んでいることになります。

 

この宇宙船と同じように、あなたは理想の未来から毎日少しずつ離れていっているのかもしれません。あなたが頑張れば頑張るほど、理想からより遠くへと離れていってしまう。これこそ、「仕事がつらい」「今日は働きたくない」と感じる本当の理由です。

 

 

これまでのマーケティングの常識はもう通用しない

 

誠実で知恵深いあなたは、マーケティングについてさまざまな文献を読んできたことでしょう。そうしたものの多くに「マーケティングミックス」について記されています。

 

そもそもマーケティングとは、商品が大量かつ効率的に売れるように、市場調査・製造・輸送・保管・販売・宣伝などの全過程にわたって行う企業活動の総称をいい、これらのプロセスは企業規模の大小、業種の違いを問わず共通しています。

 

そしてマーケティングミックスとは、マーケティングにおける実行計画のことです。市場環境の分析をもとに計画を立て、対象顧客へのアプローチ方法を具体的に決定することを言います。

 

具体的には次の四つの要素から成り、長くマーケティングの鉄則とされてきました。

 

product(製品)

price(価格)

place(立地・流通)

promotion(宣伝)

 

頭文字をとって「4P」とも呼ばれます。これら四つの最適な組み合わせを考えていくことから「マーケティングミックス」と呼ばれます。

 

「それなら知っているし、いつも意識して実践している」と、あなたは言うかもしれません。そして、「……だけど、うまくいかない」と続けることになります。

 

それも、そのはずです。マーケティングミックスが提唱されたのは1960年代のこと。それからの半世紀の間に、ビジネスを取り巻く環境は大きく変わりました。

 

日本の人口は増加から減少に転じ、生まれてくる子どもの数は減り続け、高齢者は増え続けています。あなたが新しいお客様と出会える可能性も減り続けているのです。

 

寝ころびながらでもスマホ一つあれば、ほとんどの買い物が済んでしまう時代になりました。スマホの中にはあらゆる情報があふれ、簡単にアクセスできます。何か欲しいモノがあれば、私たちはまず「検索」をして、数多くの店の中から買う「場所」を選びます。

 

つまり、あなたの店が選ばれ、売上を生み出す確率は下がり続けています。私たちが使ってきた分度器は、いつのまにか時代に合わなくなっていたのです。それに頼れば頼るほど、私たちは孤独な宇宙空間をさまようことになります。

 

私たちは時代に適った新たな羅針盤、つまり従来の4Pとは異なる「新しい4P」を持たなければなりません。4Pは次のように変わったのです。

 

product(製品) → story-rich product(物語性豊かな商品)

商品開発や品揃えはこれまで、機能、価格、デザインといった機能性(product)ばかりが先行しました。しかし、つくり手の思いやストーリー性といった「付加価値」が加わってこそ、思わず誰かに伝えたくなるような豊かな物語性(story-rich)を持ちうるのです。

 

price(価格) → philosophy(哲学・理念)

消費者は単なる安さ(price)だけを求めてはいません。多くの事業者が低価格ばかりを訴求し、ほかの選択肢を提示しないから価格で選ばざるを得ないだけです。商品の中に哲学や理念(philosophy)を感じられれば価格は二の次になります。

 

place(立地・流通) → promise(約束・絆)

ビジネスはこれまで有望な立地・流通(place)を求めて立地を変え、流通を構築してきましたが、いまや私たちはスマホ一つで買い物ができます。それなのに、どんなに辺鄙な立地にあろうと来店客でにぎわう繁盛店があります。お客様はそこに、そこでしか手に入れられない約束や絆(promise)を求め、わざわざ訪れてくるのです。

 

promotion(宣伝)→personality(個性・人柄)

IT技術の発達により、私たちは多量の宣伝(promotion)という洪水に飲み込まれています。溺れそうなあなたに手を差し伸べてくれるのは、信頼のおける人からの血の通った情報です。個性・人柄(personality)は、あなたが信頼のおける対象となるために欠かせない条件です。

 

大きさは強さではなく、小ささは弱さでもない

 

そんなことを、なぜ私があなたにお伝えできるのでしょうか?

 

私はこれまで商業経営専門誌の記者・編集者として、四半世紀以上にわたって商業やビジネスを見続けてきました。日本を代表する大企業の経営者から小さなまちの小さな店の従業員まで、取材した事業者、店は4000を超えます。

 

そこでは、従来のマーケティング理論の常識を超えた“奇跡”にたびたび出会ってきました。そして、そこには四つの共通点があることに気づいたのです。それが前述の「新しい4P」です。

 

人口増加、経済拡大を前提とした成功法則はもはや過去のものです。その事実に薄々気づいていた矢先、新型コロナウイルス感染症が私たちを襲いました。

 

消費意識や生活様式は一変し、もう今までのルール上でいくら頑張っても明るい未来にはたどり着けません。いえ、頑張れば頑張るほど、当人ばかりか関わる人たちが不幸になります。

 

これまで、企業規模の大きさは強さの証明でした。しかし、人類史に刻まれる激変期にあって、単に大きいだけでは、それは強さではなくなりました。メキシコのユカタン半島に堕ちた隕石が恐竜の時代を終わらせ、小さく弱いけれども変化に対応できた哺乳類が生き残ったのと、同じ時代局面を現代の経営者も迎えています。

 

こうした激動のビジネス環境を正しく捉え、成功へとたどりつく羅針盤こそ「新しい4P」なのです。そして答えは、業界や競合企業を探しても見つかりません。正解は、お客様に向き合うあなた自身の中にあるのです。

 

考えてみてください。心から一人の人を喜ばせることがどんなに難しいかを。ところがあなたは、一人ひとりのお客様にそんな喜びの仕事を、これまで毎日繰り返してきたのです。あなたには、お客様に心から「ありがとう」と言われるビジネスができるはずです。そのときあなたは、目覚めよい快適な朝を迎えられるでしょう。

 

講評拙著『売れる人がやっているたった四つの繁盛の法則』では、こんなことをお伝えしています。

 

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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