笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

全ては誰かの幸せのために

「おもしろいお店があるんですけど、知っていますか?

 

ある婦人服店経営者、ある自然農業経営者、それぞれから異口同音に教えていただいた店があり、商人います。

 

わざわざ行きたい店

 

長野県東御市で、パンと日用品の店「わざわざ」と、ギャラリー・本・喫茶・衣類を包括した空間「問(とう)」を営む平田らはる香さんです。彼らのおかげで、彼女の著書『わざわざの働きかた』を読むことができました。

 

わざわざの店名の由来は、文字どおり「わざわざ」行かなければ行けないから。公共交通機関で訪れることのできない山の上にポツンとあるといいます。

 

わざわざで商っているのは、平田さんが心からよいと思うものだけ。パンは自家製酵母や国産の材料だけを用いて薪窯とガス窯で焼かれているカンパーニュと角食の2種類のみ。よいものとは、長く使え、飽きがこず、暮らしに寄り添い、きちんと作られた日用品。共に日々の暮らしを支えるものです。

 

一方の問は、ハンドドリップコーヒーを楽しみながら、知見を広げる本、アートと古物と世界中の手仕事に出会える店。わざわざと対照的に、非日常をコンセプトにしているといいます。

 

掲げられた経営理念は「全ては誰かの幸せのために」。「わざわざではつきあう人が大体幸せを目指しています。お客様・取引先・地域・家族・スタッフ・自分のバランスを見て、周りの人と大体仲良くしたいと思っています。お客様重視で取引先をないがしろにすることも、売上を重視して地域を置いてけぼりにすることも、取引先を重視してスタッフに嫌な思いをすることも望みません。自分自身が心身ともに健康であることをベースに、楽しく毎日働ける環境を作ることを大切に、今日も笑顔でお客様をお待ちしております。」と同店のパンフレットにあります。

 

ビジネスと商いの違い

 

そして、本書『わざわざの働きかた』は私がこれまでに出会った最高のリクルートブックでもありました。第3版に寄せての序文にこうあります。

 

「これを読んでくださった方が、これからの働き方へ多少なりともヒントとなることと、わざわざで働くという一つの生き方を選んでくれたスタッフの皆には、感謝を伝えたいと思います。」。そこには、まだ見ぬ仲間とすでに共に働く仲間への愛情と感謝の心を感じます。

 

また、「毎日同じことの繰り返し」という文の中にはこうあります。「何も面白みのない日々の仕事が、今を作る。一日一日の単純作業に目がいって、数年の楽しさを分かち合えない人は、わざわざには合わないかもしれません。」(26ページ)

 

ここまで私は本文で「ビジネス」と「商い」という言葉を使い分けてきました。ビジネスとは「busy(忙しい)」を語源に持ち、商いは「飽きない」に通じる言葉ですから、その違いは歴然です。わざわざは間違いなく後者でしょう。

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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