1986年、名古屋郊外に誕生した“遊べる本屋”は、その属人性の高さから、多店舗展開なんて無理だと思われていました。それが、いまやおよそ300店を数え、チェーン・オペレーションに頼らない、ワクワクする専門店集団をつくり上げています。
以前、ヴィレッジヴァンガード創業者、菊地敬一さんを取材したときのことです。その発言の中から、皆さんとシェアしたい考え方をいくつかご紹介します。
◼️ブルーオーシャンはレッドオーシャンの中にある
アマゾンをはじめとするネット書店の成長、かたやリアル書店は店舗の大型化を進める書店業界ですが、その粗利はおよそ2割というたいへん厳しい業界です。さらには出版不況もかさなり、書店が地域に1店もない市町村が全国に300を数え、さらに広がっているそうです。
まさにレッドオーシャン。そこで菊地さん低い粗利を改善しようと雑貨を組み合わせた書店を発明したのです。
◼️複合ではなく融合、それが編集力
組み合わせといっても、店頭で文具を売っているような平凡な複合店ではありません。まさに“融合”というべき、書籍と雑貨の混沌の世界がヴィレヴァンの強みです。
しかし、「これが簡単ではない」と菊地さん。「そこに一貫した考えがないと、単に汚い店になってしまうだけで、お客さまにワクワク、ドキドキを感じさせられない」と言います。
さまざまな商品の中から何を揃え、何を揃えないかを決める編集力が必要なのです。そのためには「勉強することです。商品知識はもちろん、その背景や思想を深掘りしてこそ編集力が身につきます」と菊地さんは言います。
それを、顧客を見つめながらやりぬく。するとお客様はこう言います。「ここの店長は何で私のことを、こんなにわかっているんだろう!」。 菊地さんの本屋の魅力はここにあります。