「本当の商人には文化性があるべきだと思う」と語った商業界創立者、倉本長治は、商売を金儲けの方便とは見ていませんでした。生活や文化を豊かな楽しいものとするために行うものと説いていました。
お客様に、楽しさやうれしさ、喜ばしさを「商品」に添えて販売しましょう。しかも、その「喜ばしさ」は永遠に伝わるような喜びでありたいのです。明日に色褪せるような喜びでは、お客様の喜びは逆にマイナスとなります。
そこに商売の永遠なる繁栄があります。「ああ、この品はあの店で買ったのだ!」と思わず誰かに伝えたくなるような楽しい思い出がお客様の身と心に染み込んでいくような商いをしましょう。
多くの商品は消費され、消滅することが多いことが宿命です。しかし、楽しい思い出やそのときの嬉しさはお客様の心のどこかに残るようでありたい。この永遠に残るものこそが尊いのです。
あらゆる宗教や哲学で、物質より精神に価値を置くのはそれゆえです。商人も、高貴なる精神を物質に添えて売る者であるという誇りを忘れてはなりません。良き商人とは良き人間のことであり文化性を備えるべき、これが倉本の教えです。
文化性とは、自分の知っていることなどわずかなものと自覚し、知ろうと臨み続けることです。哲学の父ソクラテスはそれを「無知の知」と言いました。無知を自覚し、自ら考える行為の大切さを胸に刻みましょう。
【今日の商う言葉】
価値がありながら
金で買えないものは多い
商人はそうした愛や真心を
商品に添えることができる