笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

廃棄ロスと機会ロス、あなたの店はどちらで悩んでいるでしょうか。

 

過剰に仕入れたり製造したりして、売れなければ原価が無に帰す、これが廃棄ロス。仕入れ数・製造遼を絞ってしまい、本当は得られたかもしれない売上・利益を逸する、これが機会ロス。どちらも悩ましい問題ですが、前者は目に見え、後者は目に見えません。だから、つい仕入れ・製造数が尻すぼみになり、売上・利益が下向きのスパイラルに陥る店が多いのも事実。ロスを恐れる多くのチェーンストアや個店の品揃えが、お客様の心を躍らせないのはそのためです。

 

とはいうものの、無計画に仕入れ・製造しても、それを売り切る販売力が伴わなければ、廃棄ロスを垂れ流すだけです。それは大きな社会的ロスでもあります。結果、廃棄ロスを想定した高い値入れをせざるを得ません。自身の商いのつたなさによるリスクをお客様にとらせようとする行為と言ってもいいでしょう。

 

商品の背景にあるストーリーを提案

 

栃木県鹿沼市に、平均30%の廃棄ロスが当たり前という業界にあって、2%という驚異の数字を実現する生花店があります。セルフ販売ショップを含め50店舗を展開する「いわい生花」です。

 

「生活必需品ではない生花をお客様が買い求めてくださるには、『何のために?』という理由が必ずあります。理由とはストーリーです。お客様一人ひとりにあるストーリーを知り、その背景にあるライフスタイルを豊かにしてあげられなくては、私たちの商売に価値はありません」と語るのは、同店の岩井正明社長。驚異の販売力を育てた張本人です。

 

「私たちのミッションは『皆の心に笑顔の花を咲かせよう』です。そのため当店ではスタッフの販売員ではなく、お客様に花のある暮らしを提案するスタイリストです」

 

こうした提案力を背景にして廃棄ロス率を下げる原動力となっているのが商品力です。同店には二つの看板商品があります。一つは、かすみ草。それまで花束の添え花、いうならば刺身のつまに過ぎなかった存在を、長い年月をかけて開発した同店独自の技法で着色。これまで白しか存在しなかったかすみ草に34種類の彩りを与えました。これにより、これまで価値を生まなかった日蔭の花を一挙に利益商品へと育てたのです。

 

 

当たり前の商品の品質を徹底して高める

 

もう一つが、仏花としてのイメージの強い菊です。従来の生花店はグレードの低い菊を仕入れ、低価格を売りにして販売してきたが、同店は逆を行きました。

「生鮮品には等級があります。当社で売上構成比の3割を占める菊は、花の形、発色や重み、大きさで等級が決まるのですが、流通する菊の特A1%、A10%、併せて上位13%の商品しか販売していません」(岩井社長)

 

そうすると当然、価格は他店より高くなります。しかし、華やかさ、日持ちがまったく違うから、長く花を楽しむことができます。こうした質の高い商品を揃え、その価値を余すところなく伝えられるからこそ驚異の廃棄ロス率を実現できるのです。

 

そのためには、商品の付けるPOPを工夫し、花のある暮らしを身近に感じられるフラワーアレンジメントを定期的に行うなど、伝える努力を怠りません。結果、地域生活者にとって同店は、いつでも身近な存在として記憶に残り続ける一番店となっています。

 

良いものを揃え、その価値を伝える――当たり前の商売の原則ですが、その実現のためにいわい生花が人生育成に並々ならぬ努力を続けていることを忘れてはなりません。

 

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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