企業信用調査会社、東京商工リサーチによると、2021年の企業倒産(負債総額1000万円以上)件数は6030件(前年比22.4%減)。1990年(6468件)以来の6000件台で、2年連続で前年を下回りました。コロナ禍の各種支援策が奏功し、1964年(4212件)に次ぐ、57年ぶりの低水準を記録しています。
しかし、その中にあって増え続ける倒産があります。それは「後継者難」による倒産です。
社長の健康が事業リスクに
東京商工リサーチによると、2021年の後継者難倒産は、381件(前年比2.4%増)と、2年連続で前年を上回り、2013年調査開始以降で最多件数を更新。また、企業倒産6030件に占める構成比は6.3%(前年4.7%)と、最も高い水準になりました。
資本金別は、1000万円未満(個人企業他を含む)が205件(前年比1.4%減、構成比53.8%)と半数以上を占めていますが、1000万円以上5000万円未満も166件(前年152件)と増加しています。小・零細企業だけでなく、中堅規模でも事業承継は待ったなしの経営課題となっているのです。
後継者難倒産の要因としては、代表者の「死亡」が196件(構成比51.4%)、「体調不良」が121件(同31.7%)の2要因で、全体の83.2%(前年79.8%)に達しています。事業者の健康状態が大きな事業リスクになっていることがわかります。
人は必ず年をとり、誰も死から逃れられません。代表者の高齢化が進んでいます。
業績は社長の年齢に反比例
同じく東京商工リサーチによると、日本企業の代表者の平均年齢は62.49歳(前年62.16歳)に上昇。多くの中小企業では、代表者が経営全般を担っています。業績低迷が続く企業では後継者の育成などは後回しになっているケースも少なくありません。
また、2020年に「休廃業・解散」した4万9698社では、社長の平均年齢は70.23歳と初めて70代に達しました。生存企業の社長より7.74歳高く、70代以上が約6割(構成比59.7%)を占めています。高齢化で事業継続を断念する社長が増えていることを示しています。
さらに、企業の業績は社長の年齢に反比例しています。社長の年齢別に直近の企業業績をみると、「増収」は30代以下で54.2%と最も大きく、年齢と反比例する形で70代以上は39.2%と4割を下回ります。70代以上は、「赤字」や「連続赤字」の割合が全年代で最も高く、社長の高齢化と業績不振には関連性がうかがわれます。
加えて「2025年問題」が迫ります。団塊の世代の全員が75歳以上の後期高齢者となり、企業経営者も無縁ではいられません。倒産・休廃業が増加することは必至です。経営者にとって、事業承継と後継者育成は重要課題。重要であるばかりか、緊急性も日を追うごとに増しているのです。