商業界創立者、倉本長治が友として愛した商人がいました。岩城二郎、東京・渋谷に本店を置く眼鏡専門店「イワキ」の創業者です。「店は客のためにあり、店員と共に栄える」。倉本は提唱者として、岩城は実践者として、この言葉を生涯掛けて追求しました。
だから倉本は岩城を愛したし、岩城は倉本を師として敬ったのです。倉本はこんな文章を遺しています。「本当の友だちは、正しく生きるときに最も大切なものである」。まさに両者にとって互いは“本当の友だち”でした。
岩城は若い頃の体験から、利潤追求だけでは経営は立ち行かないことを知っていました。「それは果たしてお客さまのためになるか」が岩城の行動原理でした。どうすればお客さまにご満足いただけるかを真摯に考えることがイワキの商いです。
それを裏づけるのが、岩城の遺した「イワキ精神十二条」です。
一、ただ一人の満足しないお客様があってはならない
一、店の利益よりお客様の利益を守る事を第一とする
一、約束は理由のいかんを問わず必ず実行せねばならない
一、損得ではなく善悪、正しいか正しくないかがすべての行為の判断基準となる
一、どんなに小さい仕事にも自分の持てる力のすべてを出し切る事こそ尊いのである
一、仕事のプロになれ、それには自分の務めを立派に果す強い責任感がなくてはならない
一、真心のこもった親切心と豊富な商品知識はお客様への最大のサービスである
一、お買上の多少に拘わらず全てのお客様に等しく心からの感謝を捧げよう
一、思いやりの気持(恕の精神)が全員の人的結束を生み協調をつくりだす基となる
一、商品備品は多くの人手を経た時間と労力の結晶であることを心して大切に取扱おう
一、お客様からも同僚からも信頼され尊敬される人間となろう
一、商人の道は人間としての誠実をつくす道である
そう、商人の道は人間として誠実を目指す道にほかなりません。
【今日の商う言葉】
人間に人間が相対する
ふれあい業である商いで
誠実の限りを尽くすのは
繁盛の基本条件である