笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

東北・南部地方の伝統食、南部せんべい。それを販売する会社は、戦前には青森県から岩手県にかけて約500社あったといいます。ところが現在も営業を続けるのは、10分の1の約50社以下。

 

そうした状況下にありながらも、トップ企業として業界を牽引するのが岩手・二戸市にある小松製菓です。創業は1948年で、現社長は3代目の小松豊さん。売上高30億円超、従業員は270人を擁し、新たな価値を付加しながら成長を続けています。

 

同社には、創業者である小松シキさんが大切にした「人本経営」の社風が脈々と受け継がれています。1918年、シキさんは岩手県二戸市で8人兄弟の末っ子として生まれました。母親の実家は裕福な家庭だったそうですが、母親は嫁ぎ先で次々に子どもを亡くし、また義母の手ひどい仕打ちに絶えかねて、幼いシキさん一人を連れて実家に出戻りました。

 

しかし、実家にかつての栄華はなく、困窮に瀕する毎日でした。シキさんは苦労を一身に背負う母を少しでも楽にさせてあげたい一心で、尋常小学校時代からさまざまな仕事に精を出します。

 

その中で行商の手伝いから商売の楽しさを知るようになります。とはいうものの、ときには吹雪の中を行商に出て雪山で遭難しそうになったこともあったといいますから、子どものころから命懸けの苦労を重ねたのです。

 

尋常小学校を卒業するとせんべい屋に奉公に出ました。彼女の仕事は家事、子守りでしたが、忙しいときは店に出てせんべいを焼き、販売しました。そのときの経験から、のちに南部せんべいで身を立てるようになります。

 

シキさんが夫婦二人で南部せんべいの店を創業したのが1948年。ご主人は農業に勤しみながら、シキさんを物心両面から支える立場でした。シキさんの毎日の睡眠は3時間。しかし、前向きで明るく商売熱心なシキさんの周りには自然と人が集まり、その人当たりのいい話術は集まった人たちを元気にさせる力がありました。

 

同社には、シキさんがつくった「三つの誓い」という企業理念があります。

 

1.もう一度会いたい人格を創ります
2.もう一度食べたい製品を作ります
3.仕事を通して社会に貢献します

 

会社を大きくすることを目的とするのではなく、社員と商品を育て、世の中にためになることを会社の存在意義としている小松製菓。この「人を大切にする」考えが同社の成長を支えています。三つの誓いは人本経営そのもの。社員、顧客、地域社会を大切にする「三方よし」の思想がそこにあるのです。

この記事をシェアする
いいね
ツイート
メール
笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

新刊案内

購入はこちらから

好評既刊

売れる人がやっているたった4つの繁盛の法則 「ありがとう」があふれる20の店の実践

購入はこちらから

Social Media

人気の記事

都道府県

カテゴリー