〈お客様は単に「安さ」を求めているのではありません。多くの商人が安さばかりをうたい、ほかの価値を示さないから、お客様は価格で判断せざるを得ないのです。〉
〈「価値あるものなら、必ずお客様に受け入れられる。もし受け入れられないならば、それは価値の伝え方が足りないからだ。こちらの姿勢に一歩引いたところがあれば、お客様の心など動かせるものではない」〉
〈店の価値観、モノを選ぶ規準、未来への希望などをお客様と共有できていると、お客様は長く店を使ってくださるようになります。その場を訪れることが、そのお客様にとって買い物を超えた体験になるからです。〉
〈伝えたいお客様に伝わっていなければ、この世に存在していないのと同然です。〉
これらは拙著『売れる人がやっているたった四つの繁盛の法則』の文章。「価値」と「伝える」に関連するくだりの一部です。価値は伝えたい対象に届いたとき、はじめて真価を発揮すると繰り返し述べました。
では、どうやって伝えればいいのでしょうか。かつては新聞広告、チラシ、DMといった紙媒体、テレビやラジオといった公共放送しかありませんでしたし、それには少なくない費用がかかります。
しかし、すでにご承知のように、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)という道具が私たちを解放しました。ブログ、Twitter、Facebook、LINE、Instagram、Tumblr、ClubhouseさらにはYouTube、TicTokといった動画までさまざまなSNSが多くの人たちに活用されています。
先日、連載コラムを担当させていただくことになった出版社を訪ねました。大正時代の終わり、1925年創刊の月刊誌『製菓製パン』はその業界に携わる人なら知らない人がいない雑誌です。今日の話は、同誌版元の成果実験社のベテラン編集者から教えてもらったことです。
いま、和菓子の世界がすごいことになっています。論より証拠、いくつかご覧ください。
福来雀あずき宿
山形市にある「福来雀あずき宿」店主、土屋タダヒロさんの理念は「伝統や流儀を大切にし 驚きと笑顔を与えれる菓子道」。InstagramやTicTokなどSNSフォロワーは総合計20万人越え。「新しい感性で和菓子を生み出し、生クリーム大福や上生菓子など一つ一つ丁寧な仕事を心がけ、応援していただけている方に感謝の気持ちを込めながら、添加物などを使用せず、 おいしいお菓子で少しでも恩返しできればと思っております」と言います。
和菓子處吉祥庵
神奈川県寒川町で平成4年創業。二代目店主、黒田和比古さんが自家製餡でつくるねりきりが人気です。Instagramで見目麗しい和菓子が紹介されています。
御菓司福泉堂
島根県出雲市にある「御菓子司福泉堂」三代目、土江徹さんのInstagramがまたすごい。数々の和菓子コンテスト受賞歴を持つ土江さんの技術が披露されています。乙女座、趣味は工芸菓子とのこと。
夢菓子工房ことよ
三重県四日市市にある「夢菓子工房ことよ」は、和菓子・洋菓子という垣根を乗り越えて「お菓子」というものをいろんな目線でとらえ創意工夫しながら提案する店。店主の岡本伸治さんのつくるお菓子と技術はInstagram、TicTokで見ることができます。
これら「和菓子×SNS」の注目店に共通するのは、技術の高さと商品の美しさ。そして、何より価値の発信を続ける継続力にあります。参考にしてみてください。