「店とは、大衆に生活を幸福にするために必要なものを売る神聖な場のことだ。だから、常にきれいで、楽しく、うれしさに満ちていたい。嘘や不信が少しでもあってはいけない。そこにあるものは愛と真実でいっぱいであるのが本当だ」
商業界創立者、倉本長治はその著『店は繁昌のためにある』で、店の役割と在り方をこのように説きました。しかし、食品偽装や詐欺まがいの販売といったニュースに触れることは珍しくなく、倉本の教えとの乖離を思います。
損得より先に善悪を大切にすると、そこに楽しさがあふれます。なぜなら店とは、お客様に商品・サービスを通じて幸せを売る場所だからです。商品・サービスはお客様との絆を強くする手段の一つです。もちろん商人に魅力があってこその幸せであり、そこに嘘や不信があることなど論外です。
店とは、人と人が出会う場所です。一義的には“売る側”と“買う側”に分けられますが、そこには人間どうしの真心の交歓があります。お客様の喜ぶ顔が見られたとき、その一瞬こそ商人の魂へのごほうびではないでしょうか。
そのために、私たちは腕を磨かなくてはなりません。お客様の期待を超える商品・サービス、そして専門知識に裏づけられたプロフェッショナルとしての対応を身につけましょう。ただ、このとき、上からの目線ではいけません。あくまで親しい友としてお客様に寄り添うのです。
店にとって最も大切なもの、それは希望です。労働の対価として得られたお金を、あなたの店で使ってくれる――その理由は何でしょうか。それは、あなたの店が喜びをもたらしてくれるからにほかなりません。
大丈夫、あなたはできている。だから、あとほんの少しの丁寧さを加えましょう。