「事業は人なりというが、この店をみると、その経営者のようにじつにみごとなのである」と、拙著『店は客のためにあり店員とともに栄え店主とともに滅びる』の主人公、倉本長治に言わしめたのは、北海道を代表する菓子店「六花亭」創業者の小田豊四郎です。
倉本は「この店の従業員のしつけは誰の目にも行き届いている」と評し、その理由として「店員教育というのは店の繁盛のための手段ではありません。若い人の将来のために店主が行わなければならないものです」という小田の言葉を取り上げています。
従業員一人ひとりの職場に対する愛着と仕事への誇り、そして働きがいこそが六花亭が多くのお客様に愛され続ける裏づけであることを倉本は説いたのでした。同社で働くことを志望する多くの人が六花亭のファンであり、入社後も六花亭を愛する顧客です。
顧客満足と従業員の働きがいとが正比例の関係にあることは、揺るがない繁盛の法則です。お客様も従業員も、等しく同じ感情を持つ人間であるという事実を忘れてはいけません。それがたまたま自店で買物をするか、自店で働くかの違いで縁を持つだけです。
お客様に愛されない店は、従業員から慕われることもありません。逆もまたしかりです。そういう店は、お客様に見せる「表」の顔と、お客様には見せられない「裏」の顔を持っています。
繁盛する店の持つ顔は、お客様にとっても従業員にとっても、たった一つです。また、倉本は「市内の娘さんたちの就職希望を聞くと、第一が六花亭、銀行が第二」とも述べています。こうした社風は今も同社に脈々と生き続けています。
お客様から愛される店は
お客様が店員となり
その店で働く店員が
いちばんの得意客となる