笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

「あしあと」と題字に記された一冊の書籍。著者の小嶋千鶴子さんについては、こちら「一心不怠、成長無限」とこちら「イオンを創った女」と題したブログに書きましたが、弟の岡田卓也さんとともに家業の岡田屋をジャスコへと育てた経営者です。

 

本書は彼女が50年の商人人生を振り返り、そのあしあとを記したもの。1997年4月に刊行されましたが、残念ながら書店で購入できる書籍ではなく、関係者に贈られた彼女からのお礼のようなもの。そこには、大切なことが書かれています。

 

ここでは「おわりに」と、2003年の再販時加えられた「大切なこと」を紹介します。あらためて読み返してみると、平易な表現の中に、今だから理解できる商いの真実がありました。

 

おわりに

 

人間は勉強することで知識を増やして、自分たちが学んだことの中から物事の選択をし、行動に移していく。その行動基準をつくっていくのがこれからの企業家の仕事である。

 

現在起こっている出来事も、時経ればいずれ歴史になる。平成のパブル景気と崩壊、そして終息、それぞれの過程において人はどのような対応をしたか。何をしなかった人が危機を切り抜けたのか、また切り抜けられなかったのか。何をした人がより良くなったのか、また悪くなったのか。またそれらの方法を選択する時期は適切であったかどうか。デフレの次に来るのはインフレである。歴史は繰り返す。私たち経済人は景気循環の波動を素早く読み取るとともに、その歴史を学ばなくてはならない。

 

ジャスコという会社も、発足後その歴史は三十年に満たない。関係会社も多くできたが、その多くは基盤がまだ脆弱である。人材も十分育っているとはいえない。にもかかわらず創業のときの、あの撥測さが今では薄らいできている。守成のときになりつつある。

 

人間は、すぐ安住してしまうという弱さをもっているのである。どうすれば自分を安定したところにおけるかと考えてしまう。ベテランといわれる人ほどその傾向が強い。自分が今まで身につけてきたものを絶対とする錯覚がある。狭い局面しか見られない。そのような専門家が企業の将来に禍根を残すことになる。企業は停滞期に入ってしまう。

 

それをもう一度、根本から壊して、新しい創業をしなければならない時期にきているのではないか。

 

日本の国自体もまた、このような成熟した社会になって、もう一度新しい困難が起きているようである。それをどのように克服していくかは、私たち国民全員の課題だと思う。(後略)

 

大切なこと

 

『あしあと』初版から再版までの七年間は、日本の流通業界激動の季節であった。この間の教訓は貴重である。危険は絶えず繰り返す。徴候は先づ在庫の過剰に現れる。利益が商品にあるのではなく、利益は回転の速度によって決まるのである。回転の速度は、お客様の心をよく読むことによって維持される。

 

簡単なことが一番むつかしくそして努力の要ることなのである。

 

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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