誰も彼も皆が
満足という商いは
本当は誰も心から
満足などしていない
「ペルソナ」というラテン語は、もともとは古典劇において役者が用いた仮面のことでした。マーケティング用語に使われ、対象顧客を設定する架空の人格を表わすようになります。
名前・年齢・性別・趣味・住所をはじめ、細部に至る人物像を想定します。その人格に寄り添い、ニーズを満たしてところにマーケティングの勝利としたのでした。理想の顧客像——と私は理解しています。
ニーズを満たす方法は多様化しました。ネット通販、ネットオークション、フリマアプリ、サブスクリプションとさまざまです。お客様は、あなたから買わなくてはならない理由をもはや持ち合わせていないのです。
「この店へ買いにきてよかった」と満足してくれるお客様をたった一人でもつくること。「あなたの店があるおかげで人生は愉しい」と思ってもらうこと。商業界草創期の指導者、岡田徹は商人の仕事をこう定義しました。
では、たった一人の“満足してくださるお客さま”とは誰でしょうか。そんなお客様を思い浮かべ、「人生は愉しい」と思ってもらえる商いをしましょう。小さくても選ばれる理由はそこにあり、商人の喜びのそこにあります。