百万人にモノだけを
売る繁盛店よりも
わずかなお客様でも
真心を売る店のほうが尊い
「品揃えも十分ではありません。値段もけっして安いとは申せません。サービスも至って不行き届きです。ただ一つ、真心だけは買ってください」
ある商人はかつて、年に一度だけ新聞にこんなチラシを折り込みました。東北地方にある7坪ほどの小さな食料品店の話です。高い坪効率で知られる人気店ですが、さらに向上したいと思案していたときのこと。ある経営指導者が売場に立ち、販売の様子を見ていました。
その店では、数種類の飴をお客様の注文を受けてから袋に詰めてお売りしています。「平均的な容量で事前に袋詰めしておけば、一人に売る時間に五人に売れるではないか」と指摘されると店主は、気がすすまない様子で「お客様のお買い物の楽しさが、半減してしまうのではないでしょうか?」と言いました。
物が多く売れるよりも、お客様に喜んで買っていただきたい――。仮に売上げが少なくなっても、そのほうが商売の目的に適っていると確信する店主。彼の名は大高善雄、店の屋号を今日では「ヨークベニマル」と言います。あなたの店の売りものは商品でしょうか? それとも真心でしょうか?