一度目は心臓が止まった時、二度目は埋葬や火葬をされた時、三度目は人々がその人のことを忘れてしまった時――メキシコでは古来、人間には“三つの死”があると言われています。
この国では11月1日と2日を「死者の日」と呼び、この時期にはカラフルな切り紙の旗「パペルピカド」が飾られ、ガイコツの人形や、鮮やかなオレンジのマリーゴールドで彩られます。一年に一度だけ死者たちが家族のもとへ帰ってくる日として、死者を偲んで感謝し、生きる喜びを分かちあう、日本のお盆とよく似た習慣があります。
ピクサー/ディズニーによるアカデミー賞受賞アニメ映画「リメンバー・ミー」は、こうした死生観を題材とした作品です。本作では、死者たちはきらびやかな“死者の国”で楽しく暮らしていますが、生きている世界の誰からも忘れ去られたとき、彼らは“死者の国”からも消えてしまうという筋書きです。
商人もまたしかり。たとえ肉体は滅びても、店は受け継がれ、お客様の記憶に生き続けることこそ商人の本懐であり、務めです。だからこそ、私たちは今を懸命に生きるのではないでしょうか。商いこととは生きることです。
代をつなぐ繁盛店には必ず、死後もお客様に語り継がれる商人がいるものです。それが、その店への信頼の幹となり、その幹が太いほど多くの花を咲かせ、実りを豊かにします。では、あなたなら自身の死後に、どんなふうにお客様の記憶に残り、語り継がれたいと考えるでしょうか。