笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

長らく気になっていた言葉の使い分けがありました。それは「商人」と「商売人」という言葉の違いです。片方に「売」という言葉が含まれているだけのことと思われるかもしれません。

 

しかし、私はどうしても「商売人」という言葉を使う気になれず、多くの場合に「商人」という表現を選んできました。「商売人」という言葉に、何か違和感を感じるからです。あなたはどうお感じでしょうか。

 

そんな疑問を氷解させてくれた一冊の本があります。ジャーナリストの大塚秀樹さんによって2007年に記された『流通王』です。このタイトルから察しがつくように、そして副題「中内功とは何者だったのか」の示すように、ダイエー創業者であり、日本の小売業に流通革命をもたらした中内功さんの評伝です。

 

その第三章のタイトルが「商人と商売人」。中内功さんが自らを「商人」と呼ぶことに触れた上で、この二つの言葉の持つ意味を著者は次のように記しています。

 

「商人とは、社会を変えてやろうという大きな志を抱いて事業を興す人である。まったくなにもないところから、世の中をも変えてしまうような新しい事業を創造する人である」(143ページ)

 

「商売人というのは、個々の会社の利益を追求する人である。商売人にも志はあるが、それは『儲けたい』ということであり、社会を変えるような新しい事業を興してやろうなどという壮大な志とは相容れないものである」(144ページ)

 

この文章を読みながら私が思い至ったのが、商業界ゼミナールの精神であり、真商人の行動訓「商売十訓」の第一項「損得より先きに善悪を考えよ」の一文でした。商売人とは「己の損得」に終始する人を指し、商人とは「他者にとっての善悪」を優先する人を指しているのです。

 

さて、いかがでしょうか。
あなたは、商人ですか?
それとも商売人ですか?

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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