「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし」という、日本三大随筆の一つ、鴨長明の『方丈記』の書き出しはあまりに有名です。
長明の生きた鎌倉期は火災や地震、飢饉などの大きな災厄に見舞われた時代でした。こうした災厄や自身の苦難の体験を糧に、彼は「無常」という境地にたどりつき、「人生とは何か」を主題とした随筆は後世に残る名作となりました。これは昔話や他人ごとではなく、私たちが生きる現代も天災や人災にあふれています。
私たちが営む商いも、昨日と同じことは何一つありません。これまで来てくれていたお客様が、今日も来てくれる保証はどこにもありません。昨日まで仕入れられていたものが、これからも手に入るとは限らないのです。無常こそ常態であり、変化こそ日常であり、自分ができることが限られています。
だからこそ、変化を恐れるのではなく、変化を楽しむ心を養いましょう。自分ができることに集中すれば、できないことを思い悩む余裕などありません。商いとは変化対応業なのです。
【今日の商う言葉】
無常を心に留めよう
変化を恐れてはならない
そこに喜びを見いだし
対応するのが商人の務めである