笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

読書の秋、といったら月並みでしょうか。本を読むのが楽しい季節です。

 

昔の本を読み返すのもいい。初めて読んだころの思い出がよみがえるし、そのとき読み飛ばしていた一文に、大いに共感したりします。

 

 

美しいものは、いつの世でも

お金やヒマとは関係がない

みがかれた感覚と、

毎日の暮しへの、しっかりとした眼と、

そして絶えず努力する手だけが、

一番うつくしいものを、いつも作り上げる

 

この一文も、その一つ。

 

文章家であり、イラストレーターであり、デザイナーであり、写真家でもあった稀代の編集者、花森安治さんが死ぬまでつくりつづけた「暮しの手帖」創刊号の一文です。彼が描きづづけた表紙画、挿絵、手書き文字と、創作した書籍装丁、広告を集めた『花森安治のデザイン』は折々に手にとる一冊です。

 

 

花森安治の言葉と仕事は、私たち商人にとっても学びがあります。

 

私たちの日日の暮しを、

少しでも明るく、

楽しくする、

そのことを何よりも大切に考えるのが、

本当の「おしゃれ」である。

 

たとえば1946年5月の「スタイルブック」夏号の一文。最後の行の「おしゃれ」を「商人」と置き換えたとき、私たちが商う理由がはっきりとするように思うのですが、いかがでしょうか。

 

 

たとえば冒頭の一文。2カ所出てくる「うつくしい」を「おいしい」に置き換えれば、食べものをつくり商う商人へのメッセージとなります。共に、彼が指摘しているのは、日々を丁寧に生きること。生活者として幸せになりたいと願う素直な心の大切さです。

 

本書の「おわりに」で、花森安治さんがつねづね言っていたこととして、暮しの手帖社社主の大橋鎭子さんは二つの教えにふれています。一つは「暮しと結びついた美しさがほんとうの美しさだ」ということ。もう一つは、「人の手からつくられるものの美しさ、手仕事から培われる美意識の尊さ」です。本書で見られる花森さんの仕事に一貫して流れる価値観でもあります。

 

 

暮しと手仕事——私たち商人が大切にしたいものでもあります。

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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