「ペルソナ」という言葉はご存知だと思います。ラテン語で、もともとは古典劇において役者が用いた仮面のことでした。
それがマーケティング用語に使われ始め、商品開発の際に設定する架空の人格を表わすようになります。名前、年齢、性別、趣味、住所、職業、年齢、趣味、家族構成など細部にわたる人物像をつくり、その人格に感情移入することで、そうしたペルソナに当てはまる顧客像が求める商品開発に結びつけたのです。今では商品開発のみならず、顧客を持つあらゆる産業で活用されています。
「理想の顧客像」と私は理解しています。「こんなお客様に喜んでほしい」という思い、あなたの商いの精度を高めるでしょう。その理由の一つに、買物環境の多様化があります。かつて買物は、最寄り品は近所で、買い回り品は少し遠くの繁華街でするものでした。モータリゼーションの進展により商業立地は変化しました、それらは限られたものでした。
しかし、インターネット環境の一般化は、ネット通販はもちろん、オークションサイト、さらにはフリマアプリといった個人間取引へと買物の次元を拡大させました。生活者は欲しいものをスマホで、店すら介さず簡単に変える時代です。「欲しいものは店で買うもの」という思い込みは過去の常識となりました。お客様は、あなたから買わなくてはならない理由を持ち合わせていないのです。
商業界草創期の指導者、岡田徹はこう書き遺しています(「岡田徹詩集」)。
あなたの今日の仕事は
たった一人でよい
この店へ来てよかったと
満足してくださるお客様をつくることです
あなたの店があるおかげで
人生は楽しいと知ってくださることです
では、あなたにとって、たった一人の“満足してくださるお客様”とは誰でしょうか。そんなお客様をまぶたに思い浮かべ、その人に「人生は愉しい」と思ってもらえる商いを組み立てる。マーケティングとかブランディングとは、こうした営みのことです。
さらに岡田は書き遺しています。
一軒の店を持つ
その店を繁盛させる
その秘訣はいかにと私に問う人あるならば
私は言下に答えよう
一人のお客のために
もっと誠実であれと
一人のお客のために
もっと真実の愛を持とうよ
その誠実さだけが
あなたを日本一の商人に仕上げる道だと
「誠実」とは、言葉に行動を合わせることです。お客様に対する約束を掲げたならば、いかなるときもその実現に努めることです。売場のひと隅に、一つの商品の中に、あなたの誠実を感じてもらいましょう。
「日本一」とは、店数が多いとか、売上高が大きいといった“数字”で測れることではありません。お客様がことあるたびに、あたたかい感情ととともに思い出してくださり、親しい友を訪ねるようにあなたの店へ来てくださることです。
今日も、そんなお客様をつくりましょう。それは、たった一人でいいのです。それを毎日続けましょう。商いとはその積みかさねです。