笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

北区まちゼミ10年の成果

北区まちゼミ10周年を記念して製作された冊子「北区まちなかゼミナール~まちゼミ10周年とこれからのまちづくり~」に関わらせていただきました。誌上では、北区まちゼミ実行委員長の小松克弥さん、北区長のやまだ加奈子さん、そしてまちゼミの普及とまちづくりに尽力する岡崎まちゼミの会会長の松井洋一郎さんの3名が集い、それぞれの立場から、北区まちゼミの10年を振り返りつつ、地域の未来像を語り合っています。

 

以下はその載録。小松さんのご厚情をいただき、まちゼミに関わる皆さんに贈ります。

 

 

まちゼミ10年が育んだ「関係性」

 

やまだ 10周年おめでとうございます。まちゼミに取り組む皆さんの前向きなマインドにいつも注目しています。商店街にエネルギーをもたらす火付け役として、地域商業活性化の大きな支えになっています。

 

小松 松井さんが「まちゼミとは単に儲けるための手段ではなく、お客様、お店、地域の“三方よし”の活性化事業だ」と教えてくれたからです。その共通認識があるから10年続けてこられました。

 

やまだ マインドがしっかりしているから、区民の皆さんからの人気にもつながっているのですね。

 

松井 まちゼミは単なる販売促進のイベントではなく、店主が講師となって、自店の専門知識や技術を伝えることで、人と人とのつながりや信頼関係を築く営みです。結果、地域住民であるお客様の暮らしが豊かになり、まちが活気を取り戻し、お店も繁盛できるのです。

 

小松 当初は「お客さん来るの?」と懐疑的な声もありました。それでも続けるうちに、顔見知りのお客様が増え、商店街全体の雰囲気も変わっていきました。コロナのときはやめようとも思いましたが、仲間から「やめたら再開できない。規模は小さくなっても続けていこう」という声が上がりました、まちゼミによって僕らは前向きなマインドを育めました。

 

松井 まちゼミの本質は、モノを売る前に人を知ってもらうこと。結果として商売にもつながりますが、それ以上に地域におけるお店の“存在意義”を感じてもらえます。全国で450以上の地域が導入しているまちゼミは、商店主の熱意と継続の力によって支えられています。

 

 

商店街は地域の欠かせぬインフラ

 

やまだ 私も商店の娘ですから、商店街に育てられました。その経験から断言できるのは、商店街はただの買い物の場ではなく、高齢者が安心して歩ける場所であり、子どもたちが地域とつながる場所です。まちゼミはその役割を再認識させてくれます。

 

小松 まちゼミを10年続けてきて、それを実感しています。まちゼミを受講してくれるお客様、そして共に取り組む仲間たちとのつながりが私を大きく成長させてくれました。

 

やまだ いま、社会はデジタル化が進んでいます。それは必要なことですけれど、人とのつながりが薄れる面もあります。だからこそ人と人とのつながりを増やしていくべきというのが私の政策です。人の幸せは物の豊かさだけではなく、こうしたコミュニケーションから生まれてくるもの。人と人とのつながりを大切にする区をつくっていく担い手として期待しているのが商店街です。買い物という行為を通じて、人と人とのコミュニケーションを生む商店街に繁栄していただきたいというのが私の重要な政策テーマです。

 

松井 まちゼミには既存の商店街組織と比べて、若い起業者や新しい価値観を持った人、チャレンジをいとわない人が参画しやすい特徴があります。そうした人材をエリアマネジメントやまちづくりに活かしていってほしいですね。

 

やまだ はい、まちゼミの皆さんには、商店街や商業だけではなく、まちの担い手のリーダーになってほしいですね。もちろん、失敗もあるかもしれません。ダメだったらまた違うことをやればいい。諦めずに希望をもって一緒に取り組んでくれる人たちがたくさん出てきてほしい。そのきっかけこそまちゼミに取り組む人たちのエネルギーです。反発があるかもしれないけれど、ざわつくことが大切ですね。

 

松井 ざわつくことを乗り越えたときに、望む未来が生まれます。小松さん、どんどんざわつかせてくださいね。

 

小松 はい、直近でざわつかせた例としては、2022年から十条駅近隣5商店街共同で「十条まるっとバル」を始めました。これは飲食店だけではなく、小売りやサービス業などさまざまな業種が参加できるイベントであり、近隣住民の皆さまにも喜んでいただいています。今後もこのようなイベントで積極的にざわつかせていきます。

 

 

100年後を見据えたまちづくり

 

小松 商人が「売上が厳しいから行政に何かしてほしい」という姿勢では、うまくいきません。まちゼミで学んだのは、自分たちに何ができるかを考え、実行すること。その姿を示してこそ、行政も「一緒にやりましょう」と言ってくれます。

 

やまだ 北区の経済をけん引するには、区内産業や商業の活性化は欠かせません。そのためには担い手である「人」の育成に取り組み、創業や業態変更などへのチャレンジを力強く応援しています。

 

松井 今の時代、商店街は“便利だから行く”場所ではありません。“好きだから行く”“あの人がいるから行く”場所。商店が集積する街から、地域住民の暮らしを支えるエリアになることが求められています。だからこそ、商店主一人ひとりが“まちの担い手”としての自覚を持つことが重要ですね。

 

小松 まちぜみ10年続けたからこそ見えてきた課題もあります。若い世代の巻き込み、参加店の継続的なモチベーション向上。けれど、こういう“続ける価値”を感じられる場を持てたこと自体が、大きな財産です。

 

松井 まちゼミは“型”ではなく“思想”。それを自分たちの地域に合わせて育てていく柔軟さが大切です。北区のように10年続けている地域があることは、全国の励みにもなります。

やまだ まちの商人の力があってこその北区。今後も一緒に地域を育ていきましょう。

 

――北区まちゼミ10年の歩みは、商店主たちの汗と想いの結晶であり、行政との信頼関係の成果でもあります。まちゼミがつくる“学びの場”は、商売の枠を超え、人と地域をつなげる力を持っており、これからの10年も、まちを思う人たちの手で、まちゼミは進化を続けていくでしょう。

 

 

小松克弥(こまつ・かつや)
十条銀座商店街振興組合の常務理事であり、北区まちゼミ実行委員長。自身も商店街で宝飾店を営む現役の商人として、地域密着型のまちづくりに尽力。2016年に行政主体で立ち上げた「北区まちゼミ」を立ち上げ、地域の店主と住民をつなぐ交流の場を継続的に創出している。商店街の価値を再発見し、地域活性化に貢献するリーダー的存在。北区商店街連合会理事。第19回東京都商店街グランプリ「個人の部」受賞。

 

やまだ加奈子(やまだ・かなこ)
東京都北区生まれ。北区立の小学校、中学校、都立高校を経て、大妻女子大学短期大学を卒業。三井海上火災保険に勤務し、その後、損害保険代理店として独立。2007年に北区議会議員に初当選、4期務める中で北区議会議長を歴任。2020年からは東京都議会議員を2期務め、2023年4月に北区長に就任。「現場主義」と「双方向主義」を掲げ、区民の声を反映した区政運営に取り組む。実家は区内で家電店を営む。

 

松井洋一郎(まつい・よういちろう)
愛知県岡崎市の「岡崎まちゼミの会」会長であり、自身も商店主として活動しながら、全国約450地域、2000地域、3万事業者が行う「まちゼミ」の指導者。商人の自律的な学びと挑戦を支援し、地域経済の持続可能な発展を牽引するリーダーとして全国的に注目されている。また、全国タウンマネージャー協会会長、まちづくり岡崎代表取締役を務め、地域活性化伝道師として全国各地でまちづくりの支援を行っている。

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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