一、先ず朝は、召使いより早く起きよ
二、十両の客より百文の客を大切にせよ
三、買い手が気に入らず、返しに来たならば、売る時より丁寧にせよ
四、繁盛するに従って、益々倹約せよ
五、小遣いは一文より記せ
六、開店の時を忘れるな
七、同商売が近所にできたら懇意を厚くして互いに勤めよ
八、出店を開いたら、三ヵ年は食料を送れ
こう遺したのは、江戸後期の蘭学者、画家の渡辺崋山。親しい商人から依頼され、その心得として書いたものと言われています。
一では率先垂範の勤労を奨め、二では売上の多寡に囚われることを戒め、三では返品保証の大切さを説き、四では質素倹約こそ繁盛の要諦と断じています。
五では数値管理の重要性を指摘し、六では「初心忘るべからず」と諭し、七では健全な競争が互いを高めることを言い、八では慎重な出店と成果を見るまでの忍耐の大切さを教えています。
さて、あなたはいくつ実践できているでしょうか。
また、渡辺崋山は「大功は緩にあり、機会は急にあり」とも説いています。大きな功績はゆっくり積み上げていくものだが、チャンスは急に訪れることを忘れるなという意味ですが、功績を積み上げ、チャンスをつかむのも、根本には「商人八訓」の実践が欠かせません。