価値がありながら
金で買えないものは多い
商人はそうした愛や真心を
商品に添えることができる
「本当の商人には文化性があるべきだと思う」と語った倉本長治は、商売を金儲けの方便とは見ていませんでした。商いとは、生活や文化を豊かで楽しいものとするための営みである説いていました。
お客様に、楽しさやうれしさ、喜ばしさを「商品」に添えて販売しましょう。しかも、その「喜ばしさ」は永遠に伝わるような喜びでありたいのです。明日に色褪せるような喜びでは、お客様の喜びは逆にマイナスとなります。
そこに商売の永遠なる繁栄があります。「ああ、この品はあの店で買ったのだ!」という楽しい思い出がお客様の身と心に染み込んでいくような商いをしましょう。あなたならできるはずです。
多くの商品は消費され、消滅することが多いことが宿命です。しかし、楽しい思い出やそのときの嬉しさはお客様の心のどこかに残るようでありたいのです。この永遠に残るものこそが尊いからです。
あらゆる宗教や哲学で、物質より精神に価値を置くのはそれゆえです。商人も、高貴なる精神を物質に添えて売る者であるという誇りを忘れてはなりません。良き商人とは良き人間のことであり文化性を備えるべき、これが倉本の教えです。
新著『店は客のためにあり店員とともに栄え店主とともに滅びる』では、こうした倉本長治の思想を超訳、その真髄を事例を交えながら解説しました。