店の語源は「見世」という
すなわち店とは
自分の世界観を
見せる場所のことである
物々交換を行う「市」から興った商取引は、やがて常設の「店」になりました。そもそもは「見世棚」と書き、鎌倉末期に現れたと言います。店とは「見せる棚」を語源としているのです。
では、何を見せるのでしょうか。語源にあるように「世」を見せるのです。世とは、人間が暮らす場であり、そこに流れ積み重なる時間です。
見せる者の世界観を表現する手段であり、生き方を示す場所が店なのです。単にモノとお金を交換する場所ではありません。そこで営まれる商いとは、金儲けのみを目的とする行為ではないのです。
倉本長治は、商いと金儲けの違いを「商売は一品売るごとにお客様の喜びと満足が長く続く性質を持つ。金儲けには、このような心の満足を相手に与えることがない。そこに商売と金儲けの大きな開きがある」と断じています。
一人一人のお客様への誠実さは、樹が枝の一本一本に美しい花を咲かせるのと同じです。いずれは花の跡に実が熟し、その繁昌の果実の芯には必ず儲けという種子が含まれます。人のために役立ちたいという世界観が持てることほど、毎日の商売を楽しく、やりがいあるものとするものはありません。