知っていたとしても、実行しなければ、意味はありません。どんなに良い商品がつくられたとしても、またそれを仕入れられたとしても、買われて使われなければ役には立ちません。それを必要とする人びとの役に立つように努力し、出合いの機会をつくるのが商人の役割なのです。
人の役に立つように、すべての物はつくられます。しかし、つくる人とこれを実際に使用する人とは、直接に触れ合うことはなく、多くの場合は、お互いに顔も知らないことすらあります。大きなメーカーが盛んに広告宣伝を行いますが、これは顔も知らない異性に、印刷物やラジオ、テレビ、そしてSNSでラブレターを投げつけているようなものです。
顔を見合わせ、心をふれあわせての取引の現実をつかさどる商人こそ、生活者から信じられ、頼られ、愛される人でなければなりません。そこに必要なのは正直であることと、誠実であることです。正直とは、行動に言葉を合わせること。誠実とは、言葉に行動を合わせること。商人とは、そういうわけで、万人の恋人でなければならないのです。