たった一度だけお会いしただけですが、多くを教えてもらった事業家がいます。屋号の「カルぺディエム(carpe diem)」は、ラテン語で「その日の花を摘め」。英語では「seize the day」、つまり「今という時を大切に使え」という意味です。
なぜ、たった一度だけなのか? それはその人が患っていた病により帰らぬ人となってしまったから。彼女が事業として起こしたのは、癌など病を患う人の「なりたい理想の自分」を写真として残すことでした。
「写真というツールを、明日への生活の希望の糧にしていただきたい。写真を通じて、お客様の“今”に寄り添いたいと思っています。そして写真を目にした人が、それぞれの日常へ希望を感じられることを目指します」
これが自らも同じ病と闘う彼女の事業理念であり、生きる喜びでした。生きる喜びと商売することが、一致してはじめて商人の生きがいはあります。彼女はまさに自らの努力により、そんな人生をまっとうしました。
人間は必ず死にます。自分の人生は自分しか生きられません。そして人生は一度限りです。
その日の花を摘め――そこに人間の務めがあります。そして、そこに商人の喜びもあるのです。人生はいつ終わりを迎えるのかわからない「今」の積みかさねです。
【今日の商う言葉】
生きる喜びと
商売の営みが
一致してはじめて
商人の生きがいはある