笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

首都圏を中心におよそ150店舗を展開するスーパーマーケット「オーケー」の創業者、飯田勧さんが4月2日、96歳でお亡くなりになりました。インタビューしたのは2010年10月号、飯田さんが82歳のときのことでした。

 

特集「誠実は最強の商法」の巻頭記事としてオーケーを取り上げ、その肝として据えたのが飯田さんへのインタビューでした。当時の店数はまだ60店舗と小さな存在でしたが、経常利益率は5.2%、粗利益率19.9%、販管費率14.6%と、イオンリテール、イトーヨーカ堂、ライフコーポレーション、ヤオコーら並み居る大手を凌ぐ業績を誇っており、今もそれは変わりません。

 

経営理念は「極めて謙虚で、極めて誠実、極めて勤勉」。言うは易し、されど行うは難しの理念を生涯追求した飯田さんを偲び、インタビューを再掲します。

 

 

「お客さまを決して裏切らない。
それが私の商いです」

 

EDLPといっても簡単にできるものではありません。特売をやめると売上げが下がってしまいますし、日本ではメーカーも含めてすべてがそういう(特売で売上げをという)考え方ですから、なかなか踏み切れませんでした。

 

しかし1986年に基本方針にエブリデー・ローブライスを掲げて、商品の総見直しを始めました。商品の品質、売価を吟味し、品種を絞り込んで、オーケーの売価を競合店の特売価格に負けないように引き下げることにしました。

 

取引先はできるだけ替えないようにして、私たちが毎年、売上げを2割増やせば、その取引先も売上げが毎年2割増える。固定費が同じならばその分は確実に利益が出る。そのうちの3分の1でも返していただければ、年数がたてばたつほどお互いに有利な取引になります。長く取引するのがお互いに一番良い。

 

今も、競合店の値段を全部調べて、ウチが高ければそれに合わせて値下げをします。簡単なようですが、店に高い商品が山ほどあれば、とてもできません。普段から値段を意識して下げていなければできないのです。

 

 

少ない労働時間で
いかに成果を挙げるか

 

エブリデー・ロープライスの実現のためには、エブリデー・ローコストの体制確立が不可欠でした。そのため、総経費率を15%以下にする目標を立てましたが、実はあまり数字を追い掛けるようなことはしませんでした。

 

経費を下げようと人手をセーブすれば、サービスが行き届かず、商品の手の入れもできずに戦力が衰える。結局、売上げが下がってしまいます。だから、人を減らせと言ったことはありません。

 

その代わり、「売上げ100万円あたりの労働時間」をモノサシにすることにしました。少ない労働時間で成果を挙げる店があれば、そこをモデルとしてみんなが見習うようにしました。

 

店舗戦略としても、借金なしで新店を開発していく方針を立てました。今は、出店しやすいはずなのですが、誰も計算し分析して、こうですよとはっきりと教えてくれる人がいない。だから、今、地主さんにも大家さんにもそれが分かるような仕組みをつくっています。

 

実は本当に店の利益が出てくるのは、建物の償却が終わった10年後です。40年たっても、まだ、十分使える建物を造るというところから始めなければならない。メンテナンスも必要ですし、その間、どういうリスクがあるのかも予想しなければなりません。

 

人材育成も大事な課題ですが、少し偏っているところがありますね。どちらかというと店の売上げをつくるとか店の現場に強い人は出てきていますが、管理部門の人材が育っていません。

 

そのため、今、当社では新しい仕組みをつくり始め、8月からは新しい人事制度を立ち上げました。同一労働同一賃金を徹底させ、店の営業時間が長いので、部門チーフも2直3人編成にしました。退勤時には必ず代わりの人が来ているので、基本的に残業はありません。週に2日休みが取れ、3週間に1日、有給休暇も取れます。

 

勤務評価が下位10%の人を異動させたり降格させる制度は続けます。しかし、一度勉強してやり直せば復活もできます。成績が良ければ、年に4回の賞与も出ます。

 

期待を裏切らないことで
熱烈なファンを増やす

 

 

お客さまからの「ご意見カード」は、毎日、私が見ています。週におよそ400枚。先日も、「青果物が競合店に対抗していない、地域一番の安値じゃないぞ」というご意見をいただいて、私が回答の文案を考えました。

 

ナショナルブランドはEDLPを保証しますが、生鮮品は相場で価格は変動し、鮮度も品質も絶えず変わります。だから最安値の保証はできない。私がそう書いて営業部隊のみんなに見せ、意見を集め現場の要望もくみ取って回答しました。

 

どうして自分で書くかって? お客さまの立場で見たときに本当に納得できるかと、自分自身で突っ込んで考えたいからです。

 

今は客数も客単価も、両方大事にしています。家で使うものは100%オーケーで買うほどにオーケーを信用してくださる熱烈なオーケーファンを追い求めます。

 

そういう方が一人でも二人でも増えれば、売上げは増える。ですから、今、買っていただいているお客さまを裏切るようなことは決してできません。

 

期待を裏切らない、約束を守る、うそをつかない。自分で実際に買物をして回るとよく分かります。やっぱり高品質で得なものでなければ買いたくはなりません。

 

自分が買いたくなる売場にしなければいけない。今も、ただそれだけを考えています。

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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