
ぬくもりの経営
厳しい寒さが続く2月。けれど、暦の上では「立春」のころ。春を待つこの季節は、冷たさの中に“あたたかさ”がひときわ映える時期です。お客様の心も、スタッフの心も、寒さに少し疲れています。だからこそ今月は「心の温度」を上げることを意識して努めましょう。
立春は「心の節目」でもある
「節分」を過ぎると、暦は立春を迎えます。豆まきで鬼を追い出すのは、悪いものを外に出し、よいものを迎えるため。昔の人は、自然の移ろいの中に“心の切り替え”を見出していたのだと思います。
商人にとっても、立春は大切な節目です。新しい一年の方向を見定めるタイミングでもあり、年始の勢いが一段落し、少し落ち着いて自分や店を見直せる時期です。
気温はまだ寒いけれど、陽ざしは確かに春へ向かっています。その光の変化に気づくように、自分の気持ちの中にも新しい芽吹きを感じ取りたいものです。商いとは自然のリズムに寄り添いながら、人の暮らしを支える営みなのです。
寒いからこそ「心のぬくもり」が光る
お客様が店の扉を開けた瞬間、ふっと感じる“あたたかさ”。それは暖房の温度ではなく、店の空気、言葉のやりとり、表情の柔らかさがつくるものです。「寒い中ありがとうございます」「お風邪など召されていませんか」――そんな何気ない一言が、お客様の心をほぐします。
あるクリーニング店のご主人は、毎年この時期になると小さな工夫をされるそうです。洗い上がった衣類に「お疲れさまでした。今年の冬もあと少しですね」という一筆箋を添える。たったそれだけで、お客様が笑顔で帰っていくのだとか。
モノではなく、気づかいが人を動かす季節。寒さが厳しいほど、ぬくもりの価値が高まります。商売の本質は、やはり「人の心をあたためること」にあります。
店の中に“春の気配”を取り入れる
2月はまだ冬の終盤ですが、少しずつ春の兆しを感じ始める季節です。だからこそ、売場にも小さな変化を取り入れましょう。商品だけでなく、ディスプレイや音楽、香り、照明のトーンなど、五感を通して「もうすぐ春ですね」と感じてもらえる空気を演出するのです。
花のモチーフを使ったPOP、柔らかい色合いの包装紙、「新生活の準備を始めませんか」という提案メッセージ――。そうした“春のサイン”を散りばめることで、店が季節の案内人になります。
立春を境に、人の心は無意識に外へ向かい始めます。店が先に季節を感じ取って動けば、お客様の気持ちは自然とついてくるもの。商いとは季節を売る仕事でもあるのです。
誰かをあたためるには、まず自分があたたかくなければなりません。寒さや忙しさで心が冷えると、言葉も表情も固くなります。たとえば、朝の店内清掃を「仕事の準備」ではなく「心の整え」と捉える。スタッフどうしで「今日もよろしく」と声をかけ合う。休憩中に湯気の立つお茶を一緒に飲む――そんな時間が心をほぐします。
仕事の合間に少し立ち止まり、自分をねぎらうことも大切です。「今日も一日がんばれた」と感じる瞬間が積み重なれば、それが一年の大きな自信につながります。商いの原点は、心の整いにあります。冷えた心では、あたたかい売場はつくれません。
寒さを味方にする商人の知恵
冬は自然が一度立ち止まり、力を蓄える季節です。木々が芽を出す準備をしているように、商人も次の成長のためにエネルギーを溜めるとき。売上だけに焦らず、「足元を整える月」として活かすことが大切です。
お客様の声を整理する、新しいアイデアを温める、あるいはスタッフ教育や情報整理に時間を使う。見た目には静かでも、その内側で“次の季節”が動き始めています。「寒いからこそできること」を見つける商人は強い。そうして育てた準備の芽が、春に大きく花開くのです。
厳しい寒さは、商売にとって試練でもあり、チャンスでもあります。お客様の足が遠のく時期だからこそ、「あの店に行くと心があたたまる」と思われたい。気温は下がっても、心の温度を上げることはできるのです。
2月は、“ぬくもりの経営”を意識する月。小さな気づかいを積み重ねて、心で春を先取りしましょう。
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