ダイエー 中内功
イオン 岡田卓也
イトーヨーカ堂 伊藤雅敏
新著『店は客のためにあり店員とともに栄え店主とともに滅びる』の主人公、「日本商業の父」「昭和の石田梅岩」と言われた倉本長治は、その生前に多くの商人を育てました。冒頭の三人は倉本の教え子の一部です。
倉本は死後にあっても、多くの商人を育てました。ファーストリテイリングの柳井正代表取締役会長兼社長はその一人ですが、良品計画の金井政明会長もまた教え子の一人です。
良品計画では、商業界ゼミナール創始者、倉本長治の思想を冊子にまとめ、全社員で共有されています。「倉本長治先生語録10選」と名づけられた冊子には、倉本の遺した著作をもとに“10の教え”が記されています。
次の一文は、その最初に掲げられているものです。
商売は損得より善悪の方が大切である。それは儲かるか、儲からないかと言うことよりも、そのことが善いことか、悪いことかをまず考えることが根本だと言うことなのである。
これまでの商人諸君は、自分が消費生活者の隣人として、その専門の知識と愛情とでお客さまの生活を守ることが務めであるという自覚が少なく、自分自身の損得にばかり熱中してきた。
商人も人間である以上は、自分の損得の問題よりも、多くの人々のためになる「善」とか、その反対の「悪」とかの問題を優先的に考えるのが正しいのである。
どんなに自分が儲かっても、それが悪いことなら、その儲けから遠ざかるような商人こそ正しいのである。だから商人は事を計画したり、実施する時「これは儲かるぞ」と思う前に、人々のために「それは善いことか悪いことか」をまず判断すべきである。自分だけ儲かることが悪いこととは言えないが、同時に少しでも他人に損をさせてはいけないし、みんなが利益になるようなら、なおよいことだと知るべきである。
店は客のためにあり
店員とともに栄え
店主とともに滅びる
この三行のうちに商いの本質がすべて籠められています。