When I get older losing my hair, many years from now,
Will you still be sending me a Valentine, birthday cards from your way?
Will you still need me, will you still feed me,
When I’m sixty-four?
オープニングにポール・マッカートニーが歌う「When I was 64」が流れる映画を初めて観たとき、私はまだ若く、人生の複雑さや不条理を、どこか遠いものとして受け止めていたように思います。それでも、なぜか『ガープの世界』は、私の心に静かに沈み、何度も何度も思い出される作品となりました。今にして思えば、それはこの物語に「生きることの不確かさ」と「それでも愛すべき人生」が、痛いほど鮮やかに描かれていたからなのでしょう。
本作は、ジョン・アーヴィングの同名小説を原作に、1982年に公開されました。主演はロビン・ウィリアムズ。奇妙で風変わりな人生を送るT.S.ガープという男の一代記を描いた作品ですが、ただの「風変わり」では片づけられない、深い問いかけと哀しみ、そしてユーモアが詰まっています。
物語は、ガープの母・ジェニー・フィールズという、社会の常識に縛られない女性の強烈な生き方から始まります。男性を信じず、息子を人工授精のような形で授かり、自立した人生を貫く彼女の姿は、当時としても異端でありながら、フェミニズムの象徴的存在でした。そんな母親の影響を強く受けながら、ガープは「書くこと」に自分の人生の意味を見出そうとします。
ガープの人生には、笑えるほどに皮肉な偶然と、思わず目を背けたくなるような悲劇が交互に襲いかかります。飛行機事故、愛する者の裏切り、家族の喪失……。ですが、そんななかでも彼は、人を愛し、家庭を大切にし、自分なりの誠実さを保ちつづけようとします。その姿が、たとえどこか滑稽に見えても、私には胸に迫るものがありました。
この作品の魅力は、「人生には理不尽がある」と冷たく突き放すのではなく、「理不尽でも人は生きていく」ことの力強さを描いているところにあります。それは、きれいごとではありません。映画の随所には人間の欲望、愚かさ、暴力、そして愛が描かれ、何かを成し遂げた英雄ではなく、ただ懸命に生きる“ひとりの人間”の姿が映し出されています。
私がこの作品に何度も惹かれたのは、「正しさ」や「成功」とは違う次元で、人生を味わい、受け止めることの大切さを教えてくれるからです。若い頃には理解しきれなかったエピソードやセリフが、年を重ねるにつれ、まるで別の意味を帯びて語りかけてくる――そんな映画は、そう多くありません。
人生の正しさを問い直したくなったとき、少し傷ついて立ち止まりたくなったとき、私はまたこの映画を観るのでしょう。そして、ガープとともに不器用に笑い、不器用に愛し、不器用に生きることを、また選び直すのだと思います。
「死ぬ前にしっかりと人生を生きるのよ。生きていくって素敵な冒険よ」とは、幼きガープに母が語りかける言葉。「この世界はおかしい。でも、生きていく価値はある」と語りかけるそのメッセージは、ますます心に沁みてきます。







