「このままでは、地方から人も商いも消えてしまう」
そんな危機感を覚える数字があります。東京都の人口は1426万人。全国では人口減少が進むなか、東京だけが転入超過を続け、経済・人材・資金が雪だるま式に集まっています。まさに“一極集中”の象徴です。
地方で汗を流す事業者にとって、これは「人材を育てても都会に奪われる」という現実を突きつけます。繁栄する東京の裏で、地方の商人が苦しんでいるのです。

地方から人が消える現実
千葉県知事が「育てた人材が東京に吸収される」と訴えるように、地方の事業者は人手不足に直面しています。商店街は後継者難、製造業やサービス業も人材流出で経営が揺らぎます。
新潟県のある和菓子店では、高校卒業後に入社した若者を職人として丁寧に育てました。しかし数年後、その若者は「もっと給料の高い仕事がある」と東京の企業に転職してしまったそうです。店主は「せっかく育てても流出してしまう」と嘆きます。これは全国の中小事業者に共通する悩みです。
東京は潤沢な財源で子育て支援や人材確保策を進めていますが、地方は規模の違いから真似できません。だからこそ地方事業者は、自らの現場で「人への投資」を工夫する必要があります。
たとえば、島根県の家具工房では、地元のシニアを採用して木工の基礎を担ってもらい、若手はデザインや販売を担当する“世代協働”の仕組みを築いています。地域に根ざすからこそできる柔軟な働き方改革が、地方の生き残りを支えています。
地方にしかない価値を磨く
東京の魅力が「集積の利益」なら、地方には「分散の価値」があります。混雑のない暮らしやすさ、地域の絆、土地に根ざした文化や歴史。これらは都会では再現できません
長野県塩尻市のワイナリーでは、地元農家と協力してブドウ栽培から醸造まで一貫して行い、「ここでしか味わえないワイン体験」を観光と結びつけています。都会の人々がわざわざ訪れ、「地域の物語」を体験しに来るのです。
また、宮崎県の日向市では地元の漁師と連携し、鮮魚を使ったレストランや加工品を展開する取り組みが進んでいます。都市部では得られない「新鮮な海の恵み」を売りにすることで、地元経済を循環させています。
地方事業者がすべきは、自分たちの土地に眠る宝を掘り起こし、商品やサービスに変えること。地域性そのものが、最大の競争力になるのです。
一極集中を逆手にとる発想
東京にすべてを奪われるのではなく、東京市場を“活用する”発想が必要です。EC販売で全国に顧客を広げる、SNSで地域ブランドを発信する、観光で都会の人を呼び込む――地方から東京へと価値を届ける道は広がっています。
実際、山形県の農家はサクランボをオンライン販売し、東京の消費者から高い支持を得ています。「旬の時期にしか味わえない希少性」と「生産者の顔が見える発信」が付加価値を生んでいます。
さらに、高知県の商店街では、地元の小さな飲食店がSNSで情報を発信し、東京から食通が足を運ぶようになりました。東京が膨張するほど、「地方にしかない体験」が求められるのです。
東京の人口集中は止まりません。しかし、それを「嘆きの理由」にするか、「挑戦のチャンス」にするかは私たち次第です。
地方事業者がやるべきことは、自分たちの土地に眠る宝を磨き、商品やサービスに変えること。そして東京という巨大市場を逆に利用しながら、「この店があってよかった」と地域の人々に言われる存在になることです。
人口減少時代だからこそ、地方の商人が光を放てる舞台は整っています。さあ、次の一歩を踏み出しましょう。







