「うちは普通の店ですからね」
そう言いながら、肩をすくめる店主がいます。あなたは身に覚えはないでしょうか。
けれど私は、“普通”の中にこそ、店の強みが宿っている事実を何度も見てきました。たとえば、朝いちばんに来る常連さん。買うものは決まっているのに、わざわざあなたの店を選んでくれます。
それは品揃えの問題ではありません。値段の問題でもありません。その人にとって、あなたの店は「生活が整う場所」になっているのです。強みがない店はありません。あるのに、言葉になっていないだけです。
強みが見えないとき、人はつい「自分の店は弱い」と思ってしまいます。しかし本当は違います。強みほど、店にとって“当たり前”になっていて気づかないものです。
毎日やっていること。苦もなく続けていること。あるいは、誰にも褒められないけれど、黙って守り続けていること。だから見えません。透明になっているのです。
お客さまは、その当たり前に救われています。「この店があるから安心」「ここなら間違いない」という安心感は、広告ではつくれません。店主の積み重ねがつくるものです。強みとは、派手な武器ではなく、信頼の結晶です。まずこの前提を、胸に置いてください。
強みを掘り当てる“3つの問い”
では、透明になった強みをどう掘り出すか。おすすめは、店主の頭の中で考え込むことではありません。強みは、現場に落ちています。声の中にあります。鍵になるのは、次の三つの問いです。
①いちばんよく言われる言葉は?
「助かった」
「ここは安心」
「説明が分かりやすい」
「あなたがいるから買える」
店主にとっては“挨拶の一部”でも、お客さまにとっては“価値の告白”です。
②いちばん手間をかけているのは?
仕入れの目利き。下処理。試食。検品。包装。相談対応。手間はコストにも見えますが、本質は「約束」です。手間を惜しまないところに、その店の誠実が宿ります。
③いちばん断っているのは?
これが一番、強みをあぶり出します。
「うちは安売り競争はしません」
「流行だけで仕入れません」
「説明なしの販売はしません」
何を断っているかは、何を守っているかということです。つまり理念です。
この三つを、紙に書き出してください。頭の中で考えるだけにとどめてはいけません。文字にして、目で見るのです。すると不思議なことが起きます。“点”だったものが、線になってつながり始めます。
強みは“短い一文”にして武器になる
強みが見つかったら、次に必要なのは「磨く」ことです。その磨き方は、難しいテクニックではありません。短い一文にする。それだけです。
なぜなら、強みは“伝わって”初めて強みになるからです。店主の胸の中にしまわれたままの強みは、ただの自己満足です。伝わった瞬間から、POPになり、接客になり、クチコミになり、採用の軸にもなります。
一文の型は、こうです。
私たちは(誰に)
(何の不安を)
(どうやって)
(どんな状態にする店か)
たとえば――
「うちは安さではなく、迷わず選べる安心を売っている」
「初めての人が不安にならないよう、必ず説明してからお渡しする」
「売りっぱなしにせず、使い方まで一緒に考える店でありたい」
立派な文章でなくていいのです。むしろ“店の息づかい”が残る言葉が強いのです。
強みを「言葉」にした店の変化
ある地方の小さな専門店の話です。品揃えは大手にかなわず、値引きもできません。店主は「何が強みかわからない」と悩んでいました。
そこで常連さんに、こう尋ねてもらいました。「うちの店、何がいちばん助かる?」と。
返ってきた言葉は意外にも、商品に関することではありませんでした。
「ここに来ると、選ぶのが楽。迷わない」
「あなたが“これで大丈夫”って言ってくれるから安心」
店主は、その言葉を一文にしました。
「迷わず選べる安心がある店」
すると、売場づくりが変わりました。「迷う人を減らす」ために、棚の並べ方を見直し、選び方のPOPを一言だけ添え、相談の声かけを徹底したのです。結果として、客単価が上がり、リピートも増えました。
何か新しいことを始めたのではありません。“もともとやっていたこと”を、言葉にして、磨いただけです。けれど、それが店の力を一本に束ねたのです。
常連3人に聞いて一文にする
ここまで読んで「うちも強みを言葉にしたい」と思ったなら、明日やることは一つです。常連3人に、「うちの店、何がいちばん助かりますか?」と聞いてみましょう。
そして、返ってきた言葉をそのままメモする。そのメモから、あなたの店の一文をつくります。完璧にしなくていい。まずは暫定でいい。一文ができた瞬間から、店は変わり始めます。
強みは、発明ではありません。あなたの店に、すでにあります。ただ、言葉になっていないだけです。今日まで積み重ねてきたものを、どうか誇ってください。そして明日、その誇りを“言葉”として店頭に掲げましょう。その一文が、あなたの商いの背骨になります。






