笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

技と心で「つくる」

「つくる」と読む漢字には、「作る」「造る」「創る」の三つがあります。同じ読みでも、込められた意味は大きく異なります。それぞれの「つくる」に宿る精神を見つめると、商いにも人生にも通じる“仕事の作法”が見えてきます。

 

「作る」──日々の営みを整える力

 

「作る」はもっとも基本的な“つくる”です。料理を作る、書類を作る、人間関係を作る――。生活や仕事を支える「作業」や「工夫」のすべてに使われる、いちばん広い言葉です。

 

たとえば、ある和菓子店の職人は毎朝、同じ手順で餡を練り上げます。「昨日と同じように作ることが、いちばんむずかしい」と言います。この“繰り返しの作”にこそ、熟練と信頼が宿ります。

 

日々の「作る」は、派手さはなくても、暮らしや商いを支える礎です。安定したリズムのなかで、心を込めて“いつもどおり”を積み重ねること。それが「作る」という漢字の真意であり、基礎体力なのです。

 

「造る」──形を持つものに魂を吹き込む力

 

「造る」は、木や鉄、石や土など、素材から大きな形を生み出すときに使われます。船を造る、庭を造る、酒を造る――いずれも“手間と工程”を重ねる職人仕事です。

 

たとえば、秋田の酒蔵で耳にした言葉があります。「酒を造るとは、米と水と人の心を調和させること」。気候や発酵の微妙な変化を見極め、素材と向き合い、自然とともに仕上げる。そこには“つくる”というより“共に造る”という感覚があります。

 

「造る」には、技術や工程の先に“形ある美”を追求する精神が宿ります。モノを介して人に喜びを届けること――それが商人にとっての「造る」の使命ではないでしょうか。

 

「創る」──新しい価値を生み出す力

 

三つめの「創る」は、“ゼロからの発想”を意味します。文化を創る、事業を創る、未来を創る――。それは既存の枠を超え、まだ誰も見たことのない世界を形にする行為です。

 

地方の商店街で、ある若手店主が語りました。「古い建物を壊すのではなく、価値を“創る”んです。人が集まる理由をデザインできれば、まちは再び息を吹き返します」。

 

“創る”とは、現状を否定することではなく、そこに新しい意味を見いだすこと。それは理念や夢をもって挑む「志の仕事」です。自分の手で、地域の未来を創る――その意識が、時代の変化を乗り越える力になります。

 

何を「つくる」人でありたいか

 

「作る」「造る」「創る」という三つの“つくる”は、いずれも仕事の姿勢を映す鏡です。

 

まずは、日々の営みを丁寧に「作る」。
次に、形あるものに誇りを込めて「造る」。
そして最後に、理念と想いをもって未来を「創る」。

 

この三つが重なったとき、商人の仕事は単なる生業ではなく、社会を照らす創造へと変わります。“つくる”とは、技だけでなく、心を育てる行為なのです。「つくる」とは“自分を創る”ことでもあります。どんな仕事も、心の込め方ひとつで創造になるのです。

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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