笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

耳で聞き、心で聴き、相手に訊く

同じ「きく」という言葉でも、「聞く」「聴く」「訊く」では、伝わる印象も、相手への姿勢もまるで違います。日常の何気ない会話や仕事の中で、どんな「きく」を使っているか──そこに人間関係の深まり方や、成果を生むヒントが隠れています。

 

「聞く」は情報、「聴く」は心

 

たとえば、音楽を流しながら仕事をしているとき。耳にはメロディが「聞こえて」いても、心は別のことに向いています。これは「聞く」。つまり、音が耳に入ってくるだけの状態です。

 

一方で、同じ曲を静かに味わい、歌詞の意味や演奏者の思いに想いを馳せるとき──それは「聴く」です。耳だけでなく、心で受け止めている状態。「聞く」と「聴く」は、受動と能動の違いなのです。

 

仕事の現場でも同じです。お客様の言葉を「聞く」だけなら、ただの情報収集。しかし、表情や声のトーン、その背後にある思いを「聴く」ことで、相手の本音が見えてきます。繁盛する店には、必ずこの「聴く力」があります。

 

耳で「聞き」、心で「聴く」。この二つを意識するだけで、接客の質も人間関係も驚くほど変わります。

 

「訊く」は相手を尊重する行為

 

もう一つの「きく」、それが「訊く」です。これは「たずねる」「質問する」という意味ですが、単に情報を求めるだけではありません。相手に興味を持ち、敬意をもって問いかける──この姿勢そのものが「訊く」です。

 

たとえば、商人が常連客に「今日は何か特別な日ですか?」と声をかける。その一言が、会話を生み、心を近づける。「訊く」とは、心の距離を縮めるための質問です。

 

人は「聞かれる」と説明したくなり、「訊かれる」と心を開きます。質問には力があります。どんな質問をするかで、相手のやる気も、信頼も変わるのです。

 

「聴く力」は商いの力

 

私が取材で出会った繁盛店の共通点は、「よく聴く人」がいることでした。たとえば、青森駅前の市場でお客様の話を熱心に聴く鮮魚店の店主。お客様の「今日は孫が来るの」という言葉に、「じゃあ骨のない切り身にしておくね」とすぐ応じる。これこそ“聴く商い”です。

 

耳で聞いて終わりではなく、聴いた先に行動がある。聴く力は、顧客満足を超えて顧客感動を生みます。そしてその感動が、次の来店へとつながるのです。

 

聴くことは、商品を売る前に「心を受け取る」こと。「売る力」は、まず「聴く力」から始まります。

 

「聴き手」である勇気

 

世の中には、「話す力」を磨くためのセミナーや本が数多くあります。しかし、本当に人を動かすのは、「聴く力」です。相手の言葉を最後まで遮らず、評価せず、ただ受け止める。その姿勢は簡単そうでいて、実は勇気のいる行為です。

 

聴く人の前では、人は安心して心を開きます。商売も人間関係も、そこから始まるのです。「聞く」「聴く」「訊く」──この三つを意識して使い分けることで、私たちは日々の対話をもっと深められます。

 

・耳で「聞く」=情報を受け取る
・心で「聴く」=思いを受け止める
・相手に「訊く」=関係をつくる

 

商いも人生も、「きく力」によって育ちます。今日もどうか、耳と心を澄ませてみてください。そこには、きっとまだ“聴こえていない声”があるはずです。「きく」は三つの扉を開く言葉。耳・心・相手──そのすべてを大切に聴いていきましょう。

 

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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