店はただの物売りの場所ではありません。商人が何を信じ、どんな価値観を持ち、どう生きたいかを問い続ける“場”です。その存在自体が、商人が生きる姿勢なのです。
東京・早稲田にある「こだわり商店」の店主、安井浩和さんは、祖父の代から続く食肉問屋のもと3歳から働き、18歳で店長に就任。スーパーマーケットの経営を任されるほど商売の現場を知っていた彼ですが、2007年には直営3店舗・テナント8店舗をすべて閉じ、全国の生産地を巡り、自分自身が食べておいしかったものだけを集めた食料品店「こだわり商店」を2009年にオープンさせました。
同店は、全国40カ所以上を巡って選び抜いた食材が並ぶ、産地直送の食料品店。商品には、仕入れた理由を書いた手描きのポップが添えられ、それはまさに「語る棚」であり、店全体が一冊の本であり、一人の人間の物語そのものです。
安井さんは「商品を仕入れること=結婚すること」と語ります。価格や条件だけでなく、「一緒に育てていける人や商品を選びたい」とその覚悟を棚の一つひとつに込めています。これは「売りたい」ではなく、「伝えたい」という、あくまで自分の理念と信念をもって商いを貫く姿です。
さらに安井さんは地元商店街にも深く関わり、自ら大隈通り商店会会長を務め、地域への思いを行動に移しています。また、「まちにもう一つの嘱託を」をコンセプトにする飲食店「都電テーブル」など複数の店づくり・まちづくりに取り組むことで、「自分の人生を、まちとともに歩む舞台」にしています。
まさに「こだわり商店」は、安井浩和さんの人生そのものが表現され、発信されている場です。商いは商品を提供するだけでなく、「自分を伝え、人生を語り、地域とともに生きる大舞台」であることを、この店は教えてくれます。
店とは自分を表現する
メディアであり
ステージであり
人生そのものである






