笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

◆今日のお悩み

仕事で大失敗をしてしまい、同僚に大迷惑をかけてしまいました。職場に行くのがとてもつらく、今にも辞めたい気持ちです。

 

職場での失敗は、誰にとっても重くのしかかるものです。とくに同僚や上司に迷惑をかけたとなれば、気まずさや自己嫌悪から「もう辞めてしまいたい」と思うのも無理はありません。けれども、その「逃げ出したい」と感じる今こそ、自分を成長させる最大の機会が訪れているのかもしれません。

 

「人は失敗からしか、本当の意味での学びを得られない」。これは、私が取材を通して何度も耳にしてきた経営者の共通の実感です。この言葉を裏づけるような一人の商人のエピソードがあります。

 

北海道の帯広市で、手づくりアイスクリームの製造・販売を行う「ウエモンズハート」という小さな会社があります。牧場を営む上野文彦・眞由美夫妻が、地元の牛乳を使ってアイスクリームをつくりはじめたのは1990年代のことでした。

 

当初は商品も設備も素人同然。アイスを納品したはずが、冷凍温度の管理が甘く溶けていたり、イベントで売るつもりが機材トラブルで販売不能になったり……。失敗続きで赤字もかさみ、「もうやめようか」と夫婦で話し合った夜も数えきれなかったそうです。

 

けれども、ある日、ひとりの常連客がこう声をかけたのです。「たしかに失敗はある。でも、ここのアイスは“気持ち”がこもってるから、また食べたくなるんだよね」。

 

その言葉に背中を押された上野さん夫妻は、失敗を「終わり」ではなく「始まり」に変える覚悟を固めます。製造工程を見直し、地域の専門家に相談し、衛生管理や冷凍輸送を一から勉強しました。

 

「迷惑をかけた人の信頼を取り戻すまでは、辞める資格はない」と心に誓ったそうです。その結果、今では全国の百貨店にも出店し、観光客だけでなく地元住民にも愛されるブランドへと育ちました。

 

この話が示すように、逆境をはねのける力とは、「自分の失敗に逃げずに向き合い続けた先にこそ生まれる」ものです。たしかに、職場に行くのがつらいとき、辞めたくなる気持ちは自然です。

 

けれども、そこで「辞める」という選択をするのは、まだあなたが自分をあきらめていない証拠です。なぜなら、本当に投げ出したい人は悩むことすらしないからです。

 

ここで、逆境を乗り越えるための三つのアドバイスをお伝えします。

 

1. まず、事実に向き合う
失敗の原因を正確に把握し、自分にできることを一つでも明確にしてください。人は「行動を始める」と少しずつ立ち直れます。

 

2. 迷惑をかけた相手に丁寧に謝る
言い訳せず、誠実に気持ちを伝えること。それだけで信頼回復の第一歩が始まります。

 

3. 「誰かの役に立つ」を目標にする
自分の評価よりも「誰かのために動く」ことに意識を向けると、不思議と力が湧いてきます。

 

仕事において、成功だけを重ねてきた人よりも、失敗から立ち上がった経験を持つ人のほうが、人の痛みに共感できるし、信頼も厚いものです。あなたの今の経験は、将来きっと誰かの支えになります。

 

だから、どうか辞めないでください。逆境は、逃げずに向き合った人の心にだけ、力となって宿るのです。

 

#お悩みへのアドバイス

逃げずに向き合う勇気を持とう
失敗こそ学びの種となる
謝ることは強さなり
逆境こそ力の源である

 

※このブログは、東海道・山陽新幹線のグリーン車でおなじみのビジネスオピニオン月刊誌「Wedge」の連載「商いのレッスン」を加筆変更してお届けしています。2年間24回をもって連載は終了させていただきますが、毎号、興味深い特集が組まれていますので、ぜひお読みいただけると幸いです。また、これまでのコラムはオンラインメディア「Wedge ONLINE」でもお読みいただけます。

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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