笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

愛と真実で適正利潤を確保せよ――商売十訓の第四訓は、商いにおける「利益」の本質を問い直しています。商売において利益は不可欠です。しかし倉本長治は、その利益をどのように得るかを厳しく問いました。

 

ただ儲ければよいのではない。愛と真実に基づいて得られた利益でなければならない。この一文には、商いの品格そのものが表れています。

 

では、もしドラッカーがこの一訓を読んだなら、どう考えるでしょうか。おそらく彼は「利益は目的ではなく条件である」と言い換えるはずです。そしてこう続けるでしょう。「利益は正しい経営の結果である」と。

 

ドラッカーが見抜いた「利益」の意味

 

倉本のいう「適正利潤」とは、単なる利益の多寡ではありません。ドラッカーの言葉で言えば、それは“企業が社会に価値を提供した結果として得られるもの”です。利益は企業存続のために必要な条件であり、それ自体が目的ではありません。

 

ドラッカーは「利益を目的にすると経営は歪む」と指摘しました。なぜなら、利益を優先すると顧客価値が後回しになるからです。一方で、顧客に価値を提供し続ける企業には、結果として利益が生まれます。この順序が重要なのです。

 

倉本の言う「愛と真実」とは、この順序を守るための原理です。愛とはお客様への誠意であり、真実とは偽りのない商いです。この二つがあって初めて、利益は正当なものとなります。

 

同じ利益でも、その中身は大きく異なります。短期的に利益を上げる方法はいくらでもあります。しかし、それが顧客の信頼を損なうものであれば、長くは続きません。

 

・過剰な売り込み
・誇張された説明
・一時的な値引きに頼る販売

 

こうした方法で得た利益は、一見すると成功のように見えます。しかし、それは顧客との関係を消耗させる利益です。

 

一方で、顧客の立場に立ち、誠実に価値を提供することで得られた利益は違います。それは信頼を積み重ねる利益であり、次の来店へとつながります。利益の大小ではなく、その質が問われているのです。

 

顧客価値と利益の関係

 

「顧客にとっての価値とは何か」とドラッカーは問いかけます。この問いに真正面から向き合う企業は、価格競争に陥りません。なぜなら、価値は価格だけで決まるものではないからです。

 

安心して選べること、信頼して任せられること、長く使えること、こうした価値を提供することで適正な利益は自然と確保されます。倉本の言う「適正利潤」とは、この状態を指しています。

 

では、この考え方をどう実践すればよいのでしょうか。特別なことではありません。日々の商いの中で、誠実な判断を積み重ねることです。たとえば次のような行動です。

 

・売れる商品でも、合わなければ勧めない
・デメリットも含めて正しく説明する
・一度きりではなく長く使える提案をする

 

こうした行動は、短期的には効率が悪く見えるかもしれません。しかし、それこそが信頼を生み、結果として安定した利益につながります。さらに重要なのは、利益を「結果」として捉えることです。目の前の売上だけを追うのではなく、顧客との関係を育てる。その視点が商いの質を高めます。

 

「適正利潤」が店を強くする

 

いまの時代、価格だけで勝負することは難しくなっています。情報が透明化し、比較が容易になった中で、単なる安さはすぐに競争に巻き込まれます。その中で強いのは、「この店なら安心できる」と思われる店です。その安心は、愛と真実に基づいた商いからしか生まれません。

 

適正利潤とは、単に適正な価格設定のことではありません。顧客との信頼関係の上に成り立つ持続可能な利益です。

 

倉本長治は「愛と真実で適正利潤を確保せよ」と言いました。ドラッカーは「利益は目的ではなく条件である」と言いました。この二つは、同じ本質を指しています。商いとは、利益を追い求めることではなく、価値を生み続けることです。そしてその結果として、利益が生まれます。

 

どのようにして得た利益か。その問いに胸を張って答えられるかどうか。それが商人としての品格を決めます。愛と真実に基づく利益だけが長く続く。その原点が第四訓にこめられているのです。

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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