今年も残すところ10日ほど。街がせわしなく動き、人も気持ちも走り出す季節です。そんなときこそ、商人に必要なのは「スピード」よりも「整える力」です。昭和を代表する経営思想家、倉本長治の言葉「焦るな、驕るな、腐るな」にならい、今を生きる商人に贈りたい三つの「あ」があります。
それが――あわてるな、あきらめるな、あたたまれ――です。
あわてるな――忙しさの中に心の余白を
師走の朝、電話は鳴り続け、注文は増え、来客も絶えません。「やらなきゃ」「間に合わない」と気持ちばかりが先へ走っていく。しかし、焦りが増えるほど、見落としも増えます。
あわてると、言葉が荒くなり、顔から笑顔が消えます。そんなときこそ、深呼吸をひとつ。呼吸を整えると、不思議と心が戻ってきます。
ある飲食店の女将はこう話してくれました。「忙しいときほど、笑うようにしてるの。笑うと、みんなの動きが整うのよ」。そう、店の空気は、店主の呼吸で決まる。あわてずに働く人の背中に、安心感が宿ります。
あきらめるな――一年の締めくくりはまだこれから
12月に入ると、多くの人がこう言います。「もう今年も終わりだな」。でも、本当に終わったのでしょうか。残り10日、いや1日でも、まだできることがあります。
年末までの時間を「あと少し」と思うか、「まだある」と思うかで、結果は大きく変わります。商いとは、最後の1日までお客様に誠実であることなのです。
ある呉服店の店主は、こう語りました。「12月31日まで、誰かの“今年最後の買い物”があります。その瞬間に全力を尽くしたい」。 その心こそ、商人の誇りです。
あきらめない姿勢が、年明けの繁盛を呼ぶ。終わりの美しさが、次の始まりを照らします。
あたたまれ――冷えた心にぬくもりを灯す
寒さが深まる師走。人の心も、知らぬ間に冷えていきます。だからこそ、店には“あたたかさ”が必要です。それは暖房の温度ではなく、言葉の温度。「いつもありがとうございます」「お体に気をつけて」というたった一言で、お客様の表情がやわらぎます。
青森のあるスーパーでは、年末のレジに“ありがとうポスター”を掲げています。「一年間、地域の皆さまに感謝します」。その文字を見るたびに、買い物客は「この店でよかった」と感じるそうです。
心があたたかい店に、人はまた帰ってきます。繁盛とは、売上よりも“あたたかい空気”がつくるものです。
三つの「あ」で、師走を乗り切る
あわてるな。
あきらめるな。
あたたまれ。
この三つの「あ」は、忙しさの波に呑まれないための“心の支え”です。焦りを鎮め、希望を絶やさず、人に優しく。それができる商人の店には、必ず“福の風”が吹きます。
年の瀬をどう締めくくるかで、新しい年の景色が変わります。心を整え、笑顔で走り抜けましょう。







