笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

なぜユニクロは、地方の一店舗から世界3位のアパレル企業へと成長できたのでしょうか。運が良かったからでしょうか。時代の流れにたまたま乗れたからでしょうか。

 

答えは「いいえ」です。ユニクロの成長は偶然ではなく、明確な必然でした。

 

本書『ユニクロの戦略』の著者・宇佐美潤祐さんは、その必然のメカニズムを内側から見てきた数少ない人物の一人。2012年から2016年、ファーストリテイリングの経営者育成機関「FRMIC」の担当役員を務め、現在は「UNLOCK POTENTIAL」を設立して人材・組織変革に取り組んでいます。

 

社内で経営人材を育成し、戦略の実行を支えてきた経験を持つ著者だからこそ、本書は外から憶測ではなく、“内側から見た必然の物語”として描かれています。「計画1割、実行9割」という帯の言葉がユニクロの経営の真髄を的確に表しているのです。

 

自己強化ループの土台

──「グローバルワン・全員経営」

 

ユニクロの戦略の根底にあるのは「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」というパーパス(存在意義」であり、それを実現するための「グローバルワン・全員経営」という基本戦略です。世界中どの拠点でも同じパーパスを共有し、社員一人ひとりが経営者意識を持って行動する──。その結果、あらゆる戦略が分断されず、相互に補完し合いながら自己強化ループを形成しています。

 

そのループを動かすのが、以下に示した、①商品戦略、②DX戦略、③国内営業戦略、④海外戦略、⑤サステナビリティ戦略、⑥人材・組織戦略という6つの戦略です。いずれも「LifeWear/Made for All──あらゆる人の暮らしをより良くする服」というパーパスを実現するための要素であり、互いに有機的に結びついています。

 

①商品戦略
なぜユニクロの商品はブルーオーシャンを生み出せるのか?

 

ユニクロは、単に衣料品を売る企業ではありません。ヒートテックやエアリズムは「下着か服か」といった既存のカテゴリーを超え、顧客の生活習慣そのものを変えました。そこに競争相手は存在せず、自ら市場を創造する「ブルーオーシャン戦略」を体現しています。

 

商品は機能性・品質・価格が三位一体で設計され、誰もが手に入れられる「高機能服」という新常識をつくり上げました。結果として、ユニクロは単なるアパレル企業ではなく「ライフスタイル・イノベーター」としての地位を確立したのです。

 

②DX戦略
どうしてユニクロは情報製造小売業へ変わることができたのか?

 

2017年から始まった「有明プロジェクト」によって、ユニクロは小売業の枠を超え、「情報製造小売業」へと進化しました。顧客データを徹底的に収集・分析し、生産から物流、販売までをシームレスにつなぐことで、需要に合わせたスピーディーな商品供給を可能にしました。

 

従来のアパレル業界を苦しめてきた「在庫リスク」「売れ残り問題」を克服し、利益構造を強化。さらに、この仕組みはサステナビリティの観点からも大きな意味を持ちます。「必要なものを必要なだけ生産する」モデルは、社会的責任と収益性の両立を実現しているのです。

 

③国内営業戦略
成熟市場でなぜユニクロは成長し続けられるのか?

 

国内市場は人口減少と成熟化により、多くの小売業が縮小を余儀なくされています。その中でユニクロが成長を続けられる理由は、「究極の個店経営」にあります。

 

〈柳井さんは「店舗が一つの単位で、そのために本部があり会社がある。会社があるのはお客様のため」と強調しています。「店は客のためにあり、店員とともに栄え、店主とともに滅びる」という社長室に飾ってある言葉を引用し、これまでは店長が主役だったが、これからは店舗スタッフを主役にした「究極の個店経営」に180度方針転換をしていくということを宣言しました〉(本書173ページ)

 

柳井正さんが経営の指針とする倉本長治のこの言葉を実践し、各店舗が地域顧客を徹底的に理解し、陳列・接客・販促を最適化しています。全国チェーンでありながら、まるで地域密着の個店のように振る舞う柔軟性。この二重構造こそが、成熟した国内市場におけるユニクロの武器です。

 

 

④海外戦略
どうやってユニクロは世界で勝ちながら、現地に根づけるのか?

 

海外展開では、グローバルスケールの効率性と現地市場への適応を両立させています。アジアでは「日常着としての普及」を重視し、欧米では「サステナブルで高機能な服」というメッセージを強調。各国の文化や消費者ニーズに合わせつつ、「LifeWear」という一貫したブランドアイデンティティを維持しています。

 

その結果、ユニクロは「日本発のグローバルブランド」としての存在感を確立し、世界市場でも強固な基盤を築いています。「Global is Local, Local is Global」という二律背反を両立させているのです。

 

⑤サステナビリティ戦略
ユニクロは社会にとって何者で、どんな良いことができるのか?

 

ユニクロのサステナビリティ戦略は、単なるCSR活動ではありません。古着回収・再利用、CO₂削減への取り組み、難民への衣料支援など、社会課題に具体的に応えるアクションを展開しています。

 

重要なのは、それらが「LifeWear/Made for All」というパーパスから派生した必然の取り組みであることです。ユニクロは「社会にとってどんな良いことができるのか」を常に問い続け、その姿勢そのものがブランド価値を高めています。

 

⑥人材・組織戦略
なぜユニクロは大企業病から逃れ続けられるのか?

 

大企業にありがちな「成功体験の呪縛」。ユニクロはその罠を避けるため、人材・組織戦略に徹底して取り組んでいます。

 

FRMICによる経営人材育成、グローバル人材の積極登用、徹底した成果主義の導入。社員一人ひとりが「全員経営」の当事者として動く文化をつくり上げています。過去の栄光に安住せず、常に未来を見据えて挑戦し続ける。その仕組みが、ユニクロを“自己変革し続ける企業”にしています。

 

パーパスを起点に
回り続ける“自己強化ループ”の全貌

 

ここまで駆け足で「ユニクロの戦略」を学んできました。では、私たちは自分自身にどんな問いを投げかけられるでしょうか。

 

・私たちの商いには「パーパス」があるだろうか?
・そのパーパスは、商品・DX・営業・組織と有機的につながっているだろうか?
・顧客や地域にとって「なくてはならない存在」と言えるだろうか?
・過去の成功体験に縛られず、未来に挑戦し続けているだろうか?

 

ユニクロの自己強化ループは、巨大企業だけのものではありません。小さな店でも、個人事業でも、同じ原理は働きます。存在意義を軸に戦略を結びつければ、必ず成長の物語を描くことができる。

 

ユニクロが「LifeWear/Made for All」で世界を変えているように、私たちも「自分たちのパーパス」で地域を、顧客を、そして未来を変えることができるのです。

 

 

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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