チラシを書いても、お客様が動かない。
SNSで発信しても、手応えがない。
POPに思いを込めても、読まれていない気がする──。
こんな悩みを持ったことはありませんか？ もしかしたら、それはあなたの“伝える力”が眠ったままだからかもしれません。
商品の価値を伝えたい。
想いを届けたい。
お客様の役に立ちたい。
その願いがあるなら、まずなすべきは「言葉」を磨くことです。商人にとって、言葉は商品と同じくらい大切な“看板”であり、“信頼”を築く道具です。
そんな「言葉の力」の本質を、明晰に、そして美しく教えてくれる一冊があります。作家・丸谷才一の名著『文章読本』です。
商いに、なぜ文章が大切なのか
丸谷さんはこう言います。
「文章は、人格をうつす鏡である」
本書は文章術についての本でありながら、「どう書くか」以上に、「どう生きるか」を問う一冊。文章とは、あなた自身の心の在り方、相手を思う気持ち、誠実さや品格がそのままあらわれるものだと、丸谷さんは語ります。
商人が日々向き合うPOP、DMや手紙、ブログ、SNS。そこににじむ“言葉の姿勢”が、商売の姿勢そのものとしてお客様に伝わります。私は日々の現場取材の中で、それを幾度となく目にしてきました。
伝わる店には、伝わる言葉があるものです。繁盛店には、伝えようとする情熱があります。そこに共通しているのは、磨かれた文章の力です。
自分の想いを届けたい
著者は、文章の名人であるだけでなく、古典への深い造詣と、現代への鋭い知性を併せ持った稀有な作家です。彼の文章には、知性があり、品格があります。そして、なにより“ユーモア”があるのです。
読む者の肩の力を抜きつつ、核心を突く。教養を語りながら、偉ぶらない。それはまさに、昔ながらの江戸商人の“粋”を感じさせる文体です。
本書は、文法や言い回しの技術にとどまらず、「なぜ書くのか」「どう読ませるか」まで掘り下げています。だからこそ、ただ文章がうまくなりたい人だけでなく、「自分の思いを届けたい」と願うすべての商人にとっての指南書なのです。
行動の先に変化がある
今、あなたが言葉で何かを伝えようとするとき、手が止まっているなら、立ち返るべきは“思いの源”と“文章の型”です。想いを正直に言葉にする勇気と、それを相手に届く形へ整える技術。その両方が必要です。
そして、それは習得できるものです。むずかしく考える必要はありません。丸谷さんの語りかけるような文体は、きっとあなたに「書くことは楽しい」と感じさせてくれるはずです。
最後に、もうひとつ名言を紹介します。
「世の中には、上手な文章と下手な文章がある。しかし、心ある文章と心ない文章という分け方もできる」
上手かどうかより、心があるかどうか。それが、商人の言葉には何より大切なのです。さあ、言葉を磨きましょう。POPひとつで、お客様がふと足を止める。チラシ一枚で、来店の背中を押せる。SNSの一言で、遠く離れた誰かがあなたを知る。
商人の未来は、あなたの「書く力」にかかっているのです。筆を取ることは、商いを動かすこと。今日から始めましょう。
