繁盛している店には、売れる理由があります。しかし、その理由を表面的な「立地がよい」「商品が美味しい」「広告がうまい」といった要素だけで片づけてしまっては、本質を見失ってしまいます。
真の繁盛とは、数字ではなく、お客様の心の中に生まれるもの。だからこそ、目の前の一人に、どれだけ深く寄り添えるかが問われるのです。
兵庫県西宮市甲陽園に本店を構える「ケーキハウスツマガリ」は、まさにそうした真の繁盛を体現している洋菓子店です。百貨店にも出店していながら、最もお客様に愛されているのは、坂の上にある本店。立地条件としては決して便利とは言えませんが、それでも遠方から足を運ぶ人が後を絶ちません。
店の評判を決定づけたのは、商品そのものの美味しさだけではなく、創業者・津曲孝さんの“お客様に向けるまなざし”でした。
あるとき、本店の店頭で年配のお客様が「ここのマドレーヌを、糖質を控えている孫にも食べさせたい」とつぶやいたのを、スタッフが耳にしました。その話を聞いた津曲さんは、すぐに厨房に相談を持ちかけ、砂糖の種類や量を見直した特別なマドレーヌを試作。ほどなくして、同じ見た目でありながら糖質を抑えた“お孫さん専用”のマドレーヌを用意したのです。
お客様は「まさか、こんなことまでしていただけるとは」と感動し、後日、家族全員で本店を訪れました。今では、そのお孫さんが成人し、特別な贈り物のたびにツマガリを訪れるようになったといいます。
一人のお客様の何気ない言葉に心を傾け、行動に移す。ツマガリの繁盛の源は、まさにこの姿勢にあります。売上を伸ばすことが目的ではなく、「喜んでもらいたい」「安心して食べてほしい」という願いが、そのまま商品の一つひとつに宿っているのです。
商売とは、物を売ることではなく、心に残る体験を届けること。商品が“語る”前に、店の姿勢が“伝わる”ことが大切なのです。
繁盛という青い鳥は
競合店や業界常識でなく
お客様一人ひとりの
心の中にこそ棲んでいる







